FC町田ゼルビアvsガイナーレ鳥取:観戦レポート〜JFLの記憶を呼び起こし・・

小田急の鶴川駅から直行バスに初めて乗った。野津田(町田市陸上競技場)といえば山登りだった昔と比べたら、ずいぶんと便利になったものだ。バスに揺られながらTwitterを眺めていると、「J2は2軍のようなもの」というテレビ番組での発言が混乱を招いていた。世間からすればJ2を正確に把握できている人の方が少ないのだろう。今やFC岐阜の会員になっている私の両親にも、かつてはサッカーのJ2とプロ野球の2軍は意味が違うのを説明した覚えがある。

このバスが向かう先は明治安田生命J3リーグの試合だ。J2すら意味不明な世間からしたら、J3など存在価値からして意味不明なのかもしれない。

私自身も今回でJ3の試合を観戦するのは恥ずかしながら2回目となる。だから仕組みの部分以外はまだ何も知らない世界だ。何のために、誰のために、そして何を求めて存在しているのか。発足して2年目とあり、何もかもが手探りなんだろうとは思うけれど、きっと何かしら独自の価値はあるはず。これからJ3のことをもっと知っていこう。

そんなことを考えながらバスを降りて町田市陸上競技場を目の前にすると、見覚えのない入場ゲートとメインスタンドが視界に入った。このあたりを言及しだすと長くなるので割愛する。

JFL当時の面影がそこに

今回の対戦カードはFC町田ゼルビアガイナーレ鳥取の試合となる。FC町田ゼルビアガイナーレ鳥取も、じっくり見るのはJFLのとき以来だ。FC町田ゼルビアは勝又慶典選手や木島良輔選手のイメージが強く、ガイナーレ鳥取なんてシュナイダー潤之介選手やハメド選手の印象を引きずっている。その後、両チームともJ2での戦いを経験して、今はJ3へと舞台を移していた。

両チームともJ2とJFLを経験しているというあたりはJFLからスライドした他のチームよりも「J3って何だろう」というテーマに対してうってつけの対戦カードだ。予習をろくにしないで観戦に臨むのが私のスタイルなので、今回は過去から飛んできたくらいの感覚でピッチサイドから眺めていた。

試合が始まって間もなくすると、圧縮保存された私の記憶がみるみる解凍されていった。FC町田ゼルビアは敵陣に差し掛かった辺りの位置から素早くゴール前へボールを運んで勢いそのままにゴールを狙う。見える、見えるぞ、勝又慶典選手や木島良輔選手がそのボールを疾風のごとくゴールへ運ぶ幻が。ガイナーレ鳥取は受け身ながら最終ラインを高めに保って厚みのある攻撃を仕掛けようとする。見える、見えるぞ、ゴールキーパーのシュナイダー潤之介選手がその最終ライン付近でボールを捌き、ハメド選手にボールを集めている幻が。不思議なもので、FC町田ゼルビアは監督が同じだからまだしも、サッカーのスタイルはJFLで見ていた当時の面影があった。

FC町田ゼルビアが攻め続けた前半

前半の45分間はFC町田ゼルビアのペースで試合が運ばれた。FC町田ゼルビアが単調かつ機械的にゴール前へボールを放り込み続ける一方で、ガイナーレ鳥取は最終ラインを上下させながらその対応に追われる構図だ。

ガイナーレ鳥取の松波監督が「長いボールが放り込まれる中でセカンドボールの拾いあいになると予想していた」と試合後にコメントしていた通りの展開となり、その点ではガイナーレ鳥取が無事に守り抜いたと言える。

試合展開に緩急が無いあたりはJ3たる所以でありFC町田ゼルビアがひとつ上のステージで戦うための課題でもあるのだろう。前半の45分間は決定機らしい決定機も無く消化した。

ガイナーレ鳥取の反撃実らず、FC町田ゼルビアが押し切る

後半はガイナーレ鳥取が前半の我慢を発散するが如く、サイド攻撃に輝きをみせた。FC町田ゼルビアのようなスピード感は無いが、とても丁寧だ。ガイナーレ鳥取が前に出たことで試合はどちらに転ぶか分からなくなる。

互いに攻め手こそ見せながら、決まり手はなかなか見えてこない。そうこうしているうちに後半も半分が経過して、スコアレスドローの可能性も予想した。ところがそこは私の予習不足だったわけだ。後半23分にFC町田ゼルビアが投入した宮崎泰右選手こそがこの試合を動かすことになる。後半32分、FC町田ゼルビアは前がかりになったガイナーレ鳥取の裏を突くように、速攻から宮崎泰右選手の得点で先制点を奪ってみせた。

攻めて、攻めて、ようやく掴んだホームチームの先制点にメインスタンドとバックスタンド両方の手拍子が音量を上げた。そしてまたひとつ圧縮保存された私の記憶が解凍された。そうだ、野津田と言えばこのメインスタンドの熱い雰囲気だ。当時ほど活発な野次は聞こえなかったが、メインスタンドでも応援歌に合わせて手拍子をするこの雰囲気はJFLの当時と変わらない。

試合が終盤になると、勝利を目前にしてメインスタンドとバックスタンドからの手拍子が最高潮になる。その雰囲気の中、FC町田ゼルビアは宮崎泰右選手のシュートで得点を加算し、試合を締めた。2-0でFC町田ゼルビアガイナーレ鳥取に勝利した。FC町田ゼルビアが第5節にしてようやく掴んだホーム初勝利は、紛れも無い完勝だ。

野津田に根付いていた熱さと温かさ、一体感

試合後はFC町田ゼルビアの選手がバックスタンドを経てゆっくりとゴール裏へ向かう。その過程では笑顔の観客と引き締まった表情の選手がハイタッチをしていた。これもJFLの当時見ていた光景そのものだ。

J3だからと構えていた自分がとても情けなくなった。冷静に考えてみれば当然なのだが、JFLだろうとJ2だろうとJ3だろうと、FC町田ゼルビアFC町田ゼルビアなのだから、そこにカテゴリ(リーグ)は関係ない。所属するカテゴリが何であれスタンドの一体感や選手との距離感はJFLの当時と変わっていなかったのだ。

1試合を観ただけでまとめるのは何とも早いが、野津田に芽生えたFC町田ゼルビアの文化はJリーグのブランドを得てもしっかり根を張って揺るいでいないらしい。J3ってなんだろう。その答えを出すのもまた早いが、変わらないALL POWER MACHIDAの断片を目の当たりにしたことは何かしらのヒントになるかもしれない。

(写真・文)龍星ひかる
(取材協力)東京偉蹴FOOTBALL編集部

東京偉蹴FOOTBALL・・・Jリーグ、JFL、地域リーグ、都府県リーグ、女子サッカー、ユースなど各カテゴリーを幅広く紹介するサッカーWEBメディア

検索

Twitter

Facebook