AC長野パルセイロ vs SC相模原:観戦レポート

日本フットボールリーグ第1節。J3発足が明らかになり、現行制度のJFLは今年が最後となる。J3へと旅立つチームもあれば、新JFLに残るチームもある。AC長野パルセイロSC相模原もJリーグ準加盟であるゆえ、近未来で言えばJFLはおそらく最後の年になる。

「2度の準優勝はとても素晴らしいが、やはり優勝してほしい」と長野市長さんが試合前にマイクを通して熱望した。その2度の準優勝を勝ち取った薩川前監督から引き継いだ美濃部監督は、果たしてこのミッションを遂行できるのか。

会場は南長野運動公園競技場。AC長野パルセイロのためにJ1規格への改修が予定されており、北信越時代から長く愛されてきた今の形の南長野も間も無く見納めになる。・・と感傷に浸りたいところだったが、強風と冷たい雨で大荒れの天気。トイレと本部以外に屋根のある場所がないことがちょっとした悲劇となり、「会場を楽しむ」というイベントはそれどころでなかった。
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昇格組らしからぬSC相模原

個人的に南長野でJFLの開幕を迎えるのは昨年に続き2度目となる。昨年は昇格組の藤枝MYFCAC長野パルセイロに挑んで大敗を喫したわけだが、同じ昇格組のSC相模原はいかがなものか。多少なり心配はしていたわけだが、SC相模原に限ってそれは全く必要がなかった。SC相模原は序盤からAC長野パルセイロを圧倒する。SC相模原は素早い寄せでAC長野パルセイロからボールを奪うと、個々の高い個人能力を生かすべく、ボールキープとオーバーラップやスルーパスでAC長野パルセイロのゴールへと迫った。
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前半33分、SC相模原は左からのクロスにMF8曽我部慶太が頭で合わせたが、シュートは枠外へ外れる。SC相模原は試合を優位に進められていたにもかかわらず、シュートがなかなか打てなかった。
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ひたすら耐える

前半は攻めるSC相模原、守るAC長野パルセイロという構図でカチッときまる。SC相模原が素晴らしかった反面でAC長野パルセイロはどうしてしまったという話になるが、振り返って見てみるとおそらくこの展開は狙い通りだった。その根拠は二つある。ひとつは強風だ。この日はアウェイ側からホーム側へ打ち上げたゴールキックが止まるほどの非常に強い風が吹いていた。前半のAC長野パルセイロは風下だ。速さに特徴があるAC長野パルセイロの攻撃においてこの環境はあまりにも厄介だった。それゆえあまり攻撃的に出れなかったのだろう。

AC長野パルセイロが前半おとなしかった理由のもう一つに挙げるのはSC相模原の激しいプレーだ。SC相模原は対人で非常に強く当たってきた。審判が審判ならばカード乱舞になっていたかもしれないと思うほどに。しかしこの日の主審はよくプレーを見ており、なおかつあまりファウルを取らない。下手に対抗するよりも流れが変わるのをじっと耐えた方が賢明だ。
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AC長野パルセイロSC相模原の攻撃をかわしながら反撃の時を待つ。少ない機会からショートカウンターやセットプレーの機会を作り、あわよくばの先制点を狙いに行った。

前半27分、AC長野パルセイロはショーとカウンターで右サイドから放り込んだボールにFW17松尾昇悟が頭で合わせる。シュートは左へ外れた。
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前半42分、AC長野パルセイロは左CKからDF25有永一生が頭で合わせたが、DFにライン際で跳ね返される。
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前半は0-0で終える。SC相模原が優位に進めた一方で、AC長野パルセイロのしたたかさが際立った。

AC長野パルセイロの反撃

後半にはいりしばらくするとようやくAC長野パルセイロに流れが傾き始める。AC長野パルセイロSC相模原の寄せがくる前に素早くボールを動かし、強風も味方につけながらSC相模原のゴールへと迫った。いよいよ反撃開始だ。後半8分、AC長野パルセイロは左サイドから放り込んだボールをMF11畑田真輝が合わせたが、シュートはGKに弾かれた。
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後半14分、AC長野パルセイロはカウンターから左サイドをMF14髙野耕平が抜け出してシュートまで持ち込んだが、これもGKに止められる。
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前半に比べて確実にゴールは近くになっている。

流れを取り戻したいSC相模原

後半に入って押されだしたSC相模原は焦らず守備に徹してAC長野パルセイロの勢いを殺すと、前線の選手を交代させて変化をつける。後半17分にはFW28鈴木淳に替えてFW9森谷佳祐を投入。後半30分にはDF6桝田雄太郎に替えてDF5田村仁崇を投入。後半43分にはMF8曽我部慶太に替えてMF22吉村修平を投入。当たり前かもしれないが、引き分けOKの考えるなど微塵も感じない。確実に勝ちにきていた。

後半25分、SC相模原は縦に放り込んだボールの折り返しをMF8曽我部慶太がシュートしたが、枠を外れる。
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後半36分、SC相模原はペナルティエリアでFW9森谷佳祐がボールをキープしたが、反転してはなったシュートは左へ外れた。
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劇的すぎた結末!AC長野パルセイロがAT決勝点

完全なる膠着状態とは正にこのこと。互いに決して得点を許さない緊張感が試合会場を包み込む。そこにはアマチュアたるゆったり感など微塵もない。こういう状況を見てしまうと来季から始まるJ3が楽しみで仕方が無い。

そんなアマチュアらしからぬ緊迫した試合には劇的な結末が待っていた。後半もアディショナルタイムに入ると、ホームのAC長野パルセイロが怒涛の攻撃を繰り返す。ゴール前まではボールを持込ていたのでホームのイケイケムードは最高潮に高まっていた。そして後半45+4分にその場面は訪れる。AC長野パルセイロはペナルティエリアでFW10宇野沢祐次がディフェンスを背負いながらボールを保持すると、SC相模原の注意を十分に引きつけたところで後方にボールを預けた。このボールを受けたのがロスタイムに入って出場したばかりのMF7佐藤悠希。MF7佐藤悠希はフリーでこのボールを受けると、大きく開いていたゴールマウスへと丁寧に蹴り込んだ。
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歓喜が会場を渦巻き、センターサークルから仕切り直されたところで試合終了が告げられた。AC長野パルセイロが1-0でSC相模原に勝利。3度目の挑戦となるJFL制覇へ、まずは難しい試合をものにした。

ゴール裏はもちろん、メインスタンドもバックスタンドも一緒になって熱く見守り、ピーク時には一緒になってタオマフを回したり立ち上がったり。AC長野パルセイロのホームゲームはいつ来ても非常に雰囲気がいい。悪天候が手伝って、この日は「開幕戦」という晴れ舞台にかかわらず観客数は2388人しか入らなかった。天気が良ければもっと多くのお客さんにこの試合を見てもらえたのだろうと思う一方で、この悪天候だったからこそ生まれた劇的勝利でもあるわけで。この勝利は悪天候ながら足を運んだ長野の方々へのの最高のご褒美となった。
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長野の熱いサポーターを守る屋根が完成する日が待ち遠しい。

居るべきところにたどり着いた

他会場ではSC相模原と同じ昇格組の福島ユナイテッドFCFC町田ゼルビアに勝っていた。前半に奪った得点を守りきったとのこと。その一報を聞いてしまうと、SC相模原も惜しいことをしたと感じてしまう。守りきれたかは別として、前半のうちに先制できていればもしかしたら・・。
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神奈川県リーグで対戦相手の実力とのギャップに悩まされていたのが懐かしい。下手に削られたり、削ったり、主審のレベルの低さに苛立ったり。もうそんなことで損をすることはない。選手は入れ替わっているにせよ、Jリーグ準加盟チームとして等身大で戦えるときがようやく訪れた。そして十分に通用することを示した。今回は負けてしまったが、「毎年昇格」を果たしてきたこのチームがどこまで上に食い込めるのか楽しみにしたい。
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