アルテ高崎vs三洋電機洲本:観戦レポート

日本のサッカーにシーズンオフはない。Jリーグが終わったと思いきや、天皇杯の本戦が残っていたり、インカレや高校サッカーが始まったり。幅広く見始めると、つまみ食いをしているうちに気がついたら開幕を迎えていたりする。あるいは終わりというのが来年へ向けた戦いの始まりでもあると言えば、心臓には悪いが退屈しない。この際、終わりという表現が適切かどうかはわからないが、ひとつの戦いが終わろうとしていた。JFL入替戦第2試合「アルテ高崎vs三洋電機洲本」がアルテ高崎のホーム浜川運動公園競技場で行われた。

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お伝えできなかった入替戦第1試合は三洋電機洲本のホームであるアスパ五色で行われて、アルテ高崎が3ー0で勝利。敵地で3ー0勝利ということでアルテ高崎がJFL残留へ向けて優位に立っていた。

攻め続けた三洋電機洲本が先制

少なくとも3得点が必要な三洋電機洲本は前半から攻撃的に試合を進める。元々自ら組み立てて攻めるのは得意なチームではないが、出来る事の精一杯を出した。主になったのは前線への放り込み。ゴール前で攻撃の起点を作ってアルテ高崎のゴールに迫り続けた。
19分、三洋電機洲本がひとまず先制する。三洋電機洲本は右サイドでFKを得ると、壁を越してゴール前にボールを配球する。これを受けたのは3太田晃一。太田はフリーでこれを受けると、反転して右足を振り抜き、ゴールへとねじ込んだ。

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ローペースのアルテ高崎

アルテ高崎は明らかに集中力を欠いていた。いや、欠いていたと言い切るほどではないかもしれない。必要十分のサッカーをしているように見えた。しかしながらアルテ高崎が無理をする必要はない。結果論かもしれないが、肩の力が入るぐらいならば少々気持ちに余裕のあるサッカーをした方がいい試合だった。
アルテ高崎は三洋電機洲本の攻撃をあしらうと、攻撃に転じる。27分、アルテ高崎は右サイドを16岩間雄大が攻め上がると、GKと最終ラインの裏に絶妙なスルーパスを通す。そこに走り込んでいたのは34小柴翔太。小柴は三洋電機洲本の守備陣ともつれながらボールを捉えようとしたが、あと一歩足らなかった。

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アルテ高崎は三洋電機洲本が殆ど使わなかった中盤のスペースを効果的に使う。縦にボールを動かしてはサイド攻撃を仕掛けていた。これが全国リーグを戦っているチームの標準だ。まるで幼児をあしらう様とは言い過ぎかもしれないが、パスの回し方ひとつを見ても歴然とした差を目の当たりにした。

後半、遠い1点

後半開始時、アルテ高崎は2人の選手を替えた。「ホームで勝っていなかったので勝ちたかった」とは試合後のインタビューで監督とキャプテンが口を揃えて言った台詞だ。アルテ高崎は今年のJFLはホームで1勝も挙げられていなかった。残留を目指した入替戦とはいえ、だからこそホームできちんと勝利してシーズンを締めくくりたかったらしい。下げられた2選手が特別に気持ちを切らしていたというわけでもなさそうだったが、この交代をメッセージとして後半はアルテ高崎も積極的に攻めるようになる。
後半15分、アルテ高崎は右CKのチャンスを得ると、最後は7山田裕也が右足でボールを捉える。しかし相手DFに寄せられていて十分なシュートを放つ事ができなかった。攻めど攻めど遠い1点。ホームで3得点をとったのが不思議なくらいにアルテ高崎はゴールから遠かった。

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1点が遠いのは三洋電機洲本も同じだった。放り込み一辺倒となりバリエーションに欠く攻撃ではアルテ高崎をこじ開けることができない。セットプレーでも、同じ手をアルテ高崎の守備が許すわけがない。ついに三洋電機洲本が決定機を迎えることはなかった。

決着は自らつける

そして180分の戦いは主審の笛を待たずして決着を迎える。後半ロスタイム、アルテ高崎は左サイドからクロスを送り込む。送られたクロスは三洋電機洲本の守備が対応するが、ここで甘さを見せてしまった。弾いたはずのボールはちょうど良いポストプレーとなってアルテ高崎の吉田明生へと送られてしまった。ゴール正面でボールを受けた吉田は迷うことなくボールをゴールへと蹴り込んだ。アルテ高崎はJFL最終節にロスタイムで蹴落とされた入替戦をロスタイムにケリをつけた。

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三洋電機洲本が見せた一瞬の隙。全国リーグではこの一瞬の隙が失点に繋がる。第2戦は1ー1、トータルスコア4ー1でアルテ高崎がJFL残留を果たした。

三洋電機洲本が果たした2つの役割

地域リーグ決勝大会一次ラウンド3試合、同決勝大会3試合、入替戦2試合。ながい戦いに終止符が打たれた。結果は関西リーグ1部残留。三洋電機洲本は昇格を果たすことはできなかった。
試合が終わってもピッチから離れられない三洋電機洲本の選手たち。横になる者、そのまま崩れ落ちる者、某然としたままピッチを去ろうとする者。私は藤枝ラウンドから見ているだけに、彼らがとった一つ一つの行動に胸の中を強く握られた気分になった。8試合の死闘を終えても三洋電機洲本は何も手にすることはできなかった。
いや、何も手にしていないわけではない。三洋電機洲本は大切な役割を果たした。ひとつは今回唯一の企業チームとして参加し、JFL昇格へあと一歩のところにたどり着いたこと。今年の地域決勝は特にクラブチームの参加が多く、元Jと言われる選手がどのチームにも所属している状態だった。金銭に任せて補強するチームが未だ耐えない中、身の丈にあったチーム編成でこの場所までたどり着けたことは他のチームに向けた強烈なメッセージとなったはずだ。
もう一つ、三洋電機洲本が果たした役割は、声だしのサポーターを獲得したことにある。彼らが今回だけでなく、藤枝の一次ラウンドからずっと三洋電機洲本の戦いを見届けてきたことは知っている。高崎にも応援へ駆けつけてきたというだけでも熱いものを感じるが、試合中の声だし応援をしていたことに感動を覚えた。
今の日本の地域リーグに決定的に足らないのはサポーターの存在と考えている。特に関西リーグでは1部に限れば奈良クラブバンディオンセ加古川にしかサポーターと言える団体が存在しない。アマチュアカテゴリには不要という方もいるかもしれないが、ピッチに緊張感と試合の意義を与えるサポーターは日本のサッカーがこれから発展する上で必要と私は感じている。
三洋電機洲本は8試合の死闘を経てサポーターの存在を手にした。彼らが今後も同じ様なサポートを続けていくかは分からないし、傍観者である私が口出しをすることではない。しかし、来年のリーグ戦が始まってもまた三洋電機洲本にサポーターがついていたとすれば嬉しいことはないだろう。必ずや三洋電機洲本のみならず関西リーグ、果ては日本のサッカーを支える存在のひとつになると考えている。

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最低限の結果。求められるさらなる進歩

今年もJFL残留を果たしたアルテ高崎。最悪の事態を免れてまずは安堵といきたいところだが、反省してやまないシーズンとなった。ここ数年で、かつて最弱と言われたほどに弱いチームでは確かになくなった。全国リーグを戦うに見合うサッカーをできるようになったのは大きな進歩だ。しかしながら、これでもまだ足らないというのが成績で突きつけられることとなった。来年は外部環境が安定するという噂を耳にしている。それがどう転ぶのかは蓋を開けて見なければ分からないが、アルテ高崎の来期の戦いを楽しみにしている。

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今年は日本代表がW杯でベスト16に入るという快挙を成し遂げた。日本のサッカーは着実に強くなっている。それはJリーグだけの話だけではない。Jリーグとつながっている以上、JFLも地域リーグもどんどん高いところに向かっている。今の日本のサッカーにおいて一瞬の一時だけ変わるだけでは何も生まれない。進歩し続けることが求められている。そんなことをアルテ高崎に学び、今の自分に当てはめるのであった。

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