FC町田ゼルビアvs横河武蔵野FC:観戦レポート

この日の南北多摩川合戦が特別な試合となった理由

 今日のこの試合がいかに特別な試合なのかというのを説明しなくてはならない。まずわかりやすい所でこの試合は東京都のチーム同士の試合『南北多摩合戦』と銘を打たれたダービーマッチであった。昨年の2試合はともに横河武蔵野FCが2-1で勝利しているがいずれも非常に白熱した試合だったと聞いている。

 次に前期の終盤戦であるということが重要になる。それは天皇杯のJFLシードだ。今期はJFL前期3位以内のチームにJFLシードとしての天皇杯の出場権が与えられる。このシード枠獲得を賭けた戦いだったのだ。ただし、これにはさらに複雑な事情が絡む。それは両チームが東京都のチームであるということだ。つまり両チームが天皇杯に出場するには原則として東京都予選を勝ち抜かなければならない。これが非常に困難を極めるのだ。なぜなら東京都にはJリーグでも即戦力クラスの戦力を要する大学チームがひしめいているからだ。「天皇杯に出るなら東京都予選を勝ち抜くよりJFLシードを勝ち取るほうが遥かに楽」。とはとあるサポーターの言葉であるが、決して誇張した表現ではない。両チームが天皇杯に出場するには目の前のJFLシードが何が何でも必要だった。

 FIFAワールドカップ開催期間によるJリーグ中断期間によってJリーグが無い週末となっていた。この日の観客数は1204人。横河武蔵野FCホーム観客動員の相場が約500人であるから普段の倍の人数が集まっていたことになる。関東の各Jサポーターが熱い試合を求めて西が丘に集結していた。

 加えて、この日はグループリーグ第2戦「オランダ代表vs日本代表」の開催日でも会った。日本代表のユニフォームを着た観客も見られ日本を揺るがす大一番の前哨戦としてこのカードを観戦しに方もいたことだろう。

 前置きが非常に長くなったが、この試合が熱い試合にならない理由は最初から無かった。

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消極的だった前半戦

 晴天に恵まれたこの日は元々雨の予報がされており、非常に蒸し暑かった。座っているだけで焼けそうな初夏さながらの気候だ。暑い中で両者がどのような試合を繰り広げるのか非常に興味があった。

 試合が始まると、横河武蔵野FCにいきなりビッグチャンスが訪れる。前線に放り込まれたボールはGKのクリアミスを誘発した。このこぼれだまに反応したFW冨岡大吾はボールを追いかけた後に無人のゴールへシュートを試みた。しかし放たれたボールはゴール左に逸れてしまう。横河武蔵野FCは最初にして最大のチャンスを逃してしまった。

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 しばらく武蔵野の時間が続いたが気候や雰囲気に馴染んできたFC町田ゼルビアがペースを握り返す。前半20分には勝又慶典の右サイド突破からCKのチャンスを得る。FC町田ゼルビアがこの日初めて掴んだチャンスは深津康太のヘディングシュートを演出するが、得点にはいたらなかった。チャンスを作りあっては徹底的につぶしあった両者。攻撃がままならない消極的な展開から試合は徐々に停滞する。気がつけば前半はリスクも犯さず非常に動きのない試合となっていた。明らかな後半勝負だ。

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効果的だった酒井の起用

 ところでFC町田ゼルビアは前節に引き続きの観戦となった。前節のホンダロック戦ではチャンスを量産しながら得点はオウンゴールでの1点と物足らない試合だった。しかしホンダロック戦の時のFC町田ゼルビアとは明らかに違っていた。単発の繰り返しだった攻撃に厚みが加わっていたのだ。厚みのある攻撃ができた要因は久しぶりに先発の座を掴んだ酒井良だ。酒井良はボールキープから攻撃の起点となれる選手。これまで控えに甘んじていたのが不思議なくらいである。酒井が勝又、木島の2トップの下でボールを保持し、トライアングルを形成することで攻撃の幅が格段に広がっていた。具体的にいうと、FC町田ゼルビアはホンダロック戦では高い位置でしか攻撃が組み立てられなかったが、この日は全体的に一歩低い位置でも攻撃の起点を作ることができていた。結果的に非常に落ち着いた攻撃ができており、チャンスを量産することはできなくても質の高い攻撃ができていた。得点力不足に陥っていたFC町田ゼルビアは見事に立て直されていた。

乱打戦の幕開け

 後半10分、FC町田ゼルビアはカウンターから左SB斉藤広野が左に開いていた木島良輔に展開する。木島は一回切り返してから丁寧にゴール前へボールを放り込んだ。丁寧に放たれたロブはゴール前で勝又慶典の頭で拾われてゴールへと放り込まれた。ついに均衡が破れた。

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 横河武蔵野FCは中央に絞った守備をするFC町田ゼルビアのサイドを有効に使った。後半16分、左サイドから放り込んだクロスはGKを含めた守備陣のケアを逃れてファーに流れる。FC町田ゼルビアに生まれた一瞬の隙だった。ファーに走りこんでいた関野達也に詰められてゴールネットを揺されてしまった。

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 1点が遠かった試合で両者は1点ずつ取り合った。しかしめまぐるしく攻守を入れ替える試合はウノ・ウノの同点で終わらせる気配が全くない。次はどちらのゴールネットが揺れるのか。会場は期待と不安に満たされた。

木島の個人技で町田が追加点

 昨年は6位で終わったFC町田ゼルビア。昨年と大きく違う点がひとつある。それはFW木島良輔の存在だ。木島のプレースタイルはドリブラーである。野性味あふれる気性の荒さに象徴される豪快なドリブルはJ2でも十分に通用するといわれており、JFLであれば規格外となる。再び均衡した状態でその木島が存在価値を発揮してみせた。後半33分に木島は右サイドからドリブルでPA内に進入すると、持ち込んだその勢いのまま右足を振りぬく。木島に蹴られたボールはGKの手をすり抜けてゴール左隅に突き刺さった。

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粘りの武蔵野また同点

 再びリードを奪ったところでFC町田ゼルビアは攻撃の起点となっていた酒井をベンチに下げた。明らかな逃げ切り大勢だ。FC町田ゼルビアは残りの約15分をリードの逃げ切りに費やすことにした。

 現実は甘くなかった。後半31分、FC町田ゼルビアは自陣PA直前で横河武蔵野FCにFKを与えてしまう。横河武蔵野FCのキッカー高松健太郎が放ったシュートはきれいな軌道を描いてゴールネットを揺らした。FC町田ゼルビアは逃げ切りに失敗した。

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そして決着

 横河武蔵野FCがしぶとく追いついたところで試合の行方は全くわからなくなった。中盤でのボールの奪い合いは白熱さを増し、攻守をめまぐるしく入れ替えた。その場所に精神論者がいれば「勝ちたい気持ちが強いほうが勝つ」と力説されたことだろう。終盤に勝負強さを見せたのはFC町田ゼルビアだった。後半45分、コーナーキックからクロスを上げると一度は跳ね返されるが波状攻撃と発展する。ピンボールのようにボールがゴール前で弾かれる。最後に押し込んだのは勝又慶典だった。勝又は倒れこみながらそれをゴールネットに突き刺すと、目の前で声を張り上げていたサポーターの元へと駆けていった。これが決勝点となりFC町田ゼルビアは3-2で南北多摩合戦を制し、4試合ぶりの貴重な勝ち点3を手に入れた。

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日本の歴史が動く日に・・

 たかが日本の部リーグ、たかがアマチュアチーム。今夜行われる日本代表が立つ舞台に比べたら比較にならないぐらいの小さな舞台なのは間違いない。しかしそこに戦う理由がある限り、サッカーは面白さを提供する。確信をもって宣言する。この試合は確実にテレビで見るオランダ代表対日本代表の試合よりも面白い。そしてこの試合を目撃したあなたは今日一番の勝ち組だ。

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