神奈川県から5つめのチームの挑戦 – 相模原サッカーフェスタ2010より

嫌われ者のS.C.相模原

 「SCS?知らねぇなぁ(笑)『格の違い』を見せつけろ!!」昨年の全社関東予選代表決定戦にて対戦相手であるY.S.C.C.のサポーター有志によって配布されたフリーペーパーに載せられたキャプションだ。煽りにしては鋭利なトゲが生えているのが印象的だった。

 S.C.相模原は嫌われている。嫌われていると言うのは言い過ぎかもしれないが、少なくとも多くのサッカーファンからはいい評価を聞いたことがない。彼らの言い分はこうだ。「神奈川に4チームもあるのにまだ作る気なの?」「元Jリーガー集めてずるい!」妬みといえば間違いない。元Jリーガーというブランド品を買いあさり、支援体制もさっさと整えた。そして全県で1チームが限度な地域が殆どなのに神奈川県は5つ目のJリーグチームを順調に完成させつつある。小さい力を集めて地道な活動をするのが新興クラブの王道だったはずなのに、S.C.相模原はそれを必要としなかった。ちなみに首都圏に住んでいると川崎は川崎、横浜は横浜と全く別地域の扱い方をするが、地方の人間には川崎も横浜も平塚も相模原もまとめて神奈川県で括られる。相模原といえば十分な都市だが、あくまでも神奈川の一部という扱いだ。羨ましがられるのは当然である。

 それに付け加えて今年2010年の1月には県リーグのチームとしては初のJリーグ順加盟申請をした。S.C.相模原にはたちまち「生意気」というラベルが付けられた。「地域リーグをなめんな!」緑のチームはヒールになる運命でもあるのだろうか。

問題は観客数

 そもそもいくら大都市だからといってすんなりと事が運ぶはずがない。それでもS.C.相模原がここまでとんとん拍子に駒を進めてきたのはなぜだろうか。答えはおそらくただ一つ。このチームを作ったのが元日本代表の望月重良だからだ。望月重良は名古屋グランパスエイトなどでJリーグ6チームで活躍した選手。そんな英雄が選手に声をかければ?行政に働きかけたら?事が動かないはずがない。首都圏には既に幾つものJリーグチームがあって、サッカー文化が根付いているという土壌も大きな要素だったはずだ。望月重良が動いた時点でS.C.相模原のここまでの成功は殆ど約束されていたと言える。

 選手は揃っている。お金も十分に有る。育成体制も整っている。スタジアムも改修工事中で立派なのが出来るらしい。サッカーチームに必要なものは十分揃っている。何もかも揃えたように見える。ところが、S.C.相模原はたった一つ欠けているものがあった。それは観客の数だ。なに、観客などそれほど無くてもチームはやっていける。JFLで優勝したSAGAWA SHIGA FCも平均で1000人程度と準加盟チームに遠く及んでいない。観客の数は必ずしも強さに比例しない。しかし、S.C.相模原はJリーグ入りを目指している。いずれ平均で3000人を超える観客を集めなくてはならなくなる。ファンにすべき地元の人間に認知されないうちに上り詰めていけばおそらくここで躓くことになるだろう。隣のFC町田ゼルビアが大苦戦していることも考えると、S.C.相模原も観客集めに関しては覚悟をしなくてはならない。ところで順序が逆のような気がするが、それを言ったら歴代を含めた多くのチームを否定してしまうことになるのでここは目をつぶっていただきたい。

相模原サッカーフェスタ

 S.C.相模原が観客を集めるにはどうすればよいか。そのためにはまずS.C.相模原というチームを知ってもらわないと始まらない。おそらくこんな経緯で踏み切ったはずだ。「S.C.相模原vsジャパンドリーム」名波浩や福西崇史、戸田和幸といった日本を代表するフットボーラを集めただけでもすごいのに、入場料無料で行ってしまった正真正銘のドリームマッチ。この前代未聞の大イベントはS.C.相模原に足らないピースをかき集めるべくして開催された。相模原市の政令指定都市認定PRと兼ねて。

ここからJリーグ-相模原

真剣勝負を仕掛けたS.C.相模原

 観戦無料という事情も手伝って会場には7800人の観衆が詰め掛けた。場内発表によると場外でPVを見ていた人もいると言う。その殆どが対戦相手の「Japanドリーム」の面々が目当てなのであろう。相模原市長の挨拶に始まってキックインのセレモニーが行われると、まもなく試合は開始された。

 試合の主導権を握ったのはS.C.相模原。サイドの深いエリアを上手に使って丁寧なクロスを放り込み、チャンスを作り続けた。急造チームであるJapanドリームはかみ合わないままS.C.相模原の攻撃を淡々と跳ね返し続けた。「これをしのぎ切れば大丈夫です。」と言ったのはベンチでコメントを取られた福西崇史。このコメントどおり、しのぎきったJapanドリームは反撃に転じたが攻撃の形を作ることなく前半を終えた。

ここからJリーグ-相模原

船越の2ゴールでS.C.相模原が勝利

 後半に入ると、修正したJapanドリームが一方的に攻め立てる。S.C.相模原は中央を固めてJapanドリームの攻撃を跳ね返し続けた。ついにS.C.相模原の攻撃の手は坂井洋平や斉藤将基を中心にしたカウンターに限られてしまう。詰まりになったS.C.相模原。ところが、しぶとく攻撃を仕掛けていった対価なのか温情なのかPKのチャンスを得た。

 新加入の船越優蔵がこのPKを丁寧に決めてドリームマッチとはいえ移籍後初出場初ゴールを記録した。船越のゴールでこの手の試合では最悪の展開と言えるスコアレスは免れた形だ。しかし得点はPKのみと物足らないまま終えてしまうのか。S.C.相模原はそんな不安をかき消した。船越が最後の最後で綺麗なボレーを叩き込んで試合終了の合図を迎える。大観衆は安心交じりの拍手で試合終了を歓迎した。

ここからJリーグ-相模原

焦点はリピーターの獲得

 きっと、S.C.相模原のいい宣伝にはなっただろう。この試合で初めてS.C.相模原を知った人もいただろうし、大半の人はS.C.相模原を初めて見ることになったはずだ。準加盟に向けて試合の運営を立派に出来るというアピールにもなった。問題はこの中のどれだけの人がリピーターになってくれるのか。焦点は2月11日の全社予選の初戦。この試合に何人の人が集まるのかでこの催しの意義を測ることが出来る。

地域決勝を勝ち抜けるのか

 まだ早すぎる気はするが、S.C.相模原はJFLに昇格することが出来るのかと言うのをメモとしてまとめておく。

 まずよかった点は攻撃の形がある程度見えていたこと。サイドチェンジを的確に使って両サイドの深い位置を使うと言う基本的な形が見えたのは好印象だった。それでなくとも中央を利用するオプション、押し込まれたときに速攻に徹するオプションも出来ているのでバリエーションは多くていい。守備も往年のスターの個人技を前にしても乱れることがなかったので問題ないだろう。

 S.C.相模原の問題は得点力。前半最初に見せた猛攻撃の中から得点が取れないようでは地域の強豪に勝つのは難しい。東海リーグ、九州リーグと2つの地域で得点王をとった斉藤将基のシュートも枠に飛ばなかったのはかなり不安だ。

 100点満点で100点のチームを作らなければ地域決勝は勝ち抜けない。S.C.相模原は県リーグという張り合いのないチームに埋もれることなく、100点のチームを作ることができるのか。これだけ大々的にPRして「ダメでした」は許されない。今年は勝負の年となるだろう。無茶を承知でチャレンジするこのチームの成長を見守りたい。

ここからJリーグ-相模原

<お詫び>
望月重良氏に関して、相模原出身と書いていましたが、静岡県の旧清水市出身でした。

検索

Twitter

Facebook