沖縄かりゆしFCvsレノファ山口FC:観戦レポート

1年ぶりの再会

 スタンドには多くの観客が集まっていた。その多くは緑のシャツに緑のタオルマフラーを身にまとった松本山雅FCのサポーターだ。第2試合に合わせて続々と集まってきてはレノファ山口FCに声援を送っていた。彼らにとってみれば第一試合がPK戦へもつれ込んだほうが都合がよい。なかなか攻めきれないレノファ山口FCに若干の苛立ちを覚えてきた後半30分、会場にどよめきが起こる。「あいつだ!去年あいつにやられたんだ!29番!」坊主頭に小柄な体系は非常に覚えやすい。レノファ山口FCのスーパーサブ児玉光史が去年と変わらぬ姿で現れた。

 敵チームにこれほど認知されている選手はいないだろう。児玉光史は昨年の決勝大会でもレノファ山口FCの切り札としてゴールに絡み、チームの一次ラウンド突破に貢献している。ビハインドのまま攻撃的になれない選手たちへ、児玉の投入という非常に分かりやすいベンチから反撃のメッセージが送られた。児玉は交代でピッチに入るなり、最初のチャンス、最初のタッチで決定的なシュートを放って反撃の狼煙とした。

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けん制しあった前半

 晴れ間と小雨が入り混じる。昨年もそうだった。雨雲は雨を降らすか降らさないかを迷ったかのように小雨を繰り返して観客を悩ませた。1年前といえばずいぶんたっているはずなのに、とりぎんバードスタジアムでの3日間がつい昨日のことのように記憶に蘇ってきた。全国地域サッカーリーグ決勝大会一次ラウンド第一日目。グループCの会場となった鳥取市コカコーラウエストパークには今年も精鋭4チームが集った。長くて短い3日間が終わったとき、笑っていられるのは4チーム中たった1チームのみとなる。

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 こけら落としとなる第一試合は九州王者の沖縄かりゆしFCと中国2位のレノファ山口FCの一戦。緒戦独特の緊迫した空気の中、主審の甲高い笛の音が試合開始の合図として響き渡った。

 両者共に緒戦に陥りやすい焦りも浮遊感もなく重心を低く保って慎重に試合に入った。ピッチからは研ぎ澄まされた良い意味での緊張感が伝わってくる。先に攻勢に出たのはレノファ山口FCだった。レノファ山口FCは沖縄かりゆしFCが攻めてこないと分かると前線の中央に攻撃陣を固めてロングボールを放り込む。徐々に沖縄かりゆしFCの最終ラインを押し込んでいくと、いよいよレノファ山口FCが得意とするサイド攻撃が始まる。ところがどうも今ひとつ噛み合わない。クロスを上げるまでは出来るのだが、沖縄かりゆしFCの集中した守備にことごとく跳ね返され最初のシュートを放ったのは16分の事であり、それはPA前からのミドルシュートだった。

 沖縄かりゆしFCもただ引いて耐えていたわけではない。レノファ山口FCの最終ラインが浅くなっているのを確認すると右サイドで構えている関隆倫にボールを集めて少人数で得点の機会を探る。沖縄かりゆしFCは効果的な崩しこそ出来なかったが、30分にはCKから堀健一のヘディングシュートを演出するなどセットプレーから効率よく得点を狙った。しかし前半はけん制しあったまま両者無得点で終了を迎える。

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沖縄かりゆしが狙い通りの先制点

 後半序盤の主導権を握ったのは沖縄かりゆしFCだった。沖縄かりゆしFCは両サイドハーフを左右に広げて攻撃の起点とした。それと同時に前線への人数を多くし、縦方向へのパスを効果的に配給することでレノファ山口FCの守備をかく乱する。たまに送られる最終ラインの裏のスペースへのパスで得点の機会を作る狙いだった。そして沖縄かりゆしFCは狙い通りに得点の機会を得る。後半10分に櫻田真平のパスからFW浅野大地が裏へ抜け出してPA内という至近距離でGKと一対一の局面を迎えた。このまま浅野が左足を振りぬけば得点となったであろう絶好機だったが、浅野大地は大きく転倒する。——レノファ山口FCのDF伊藤博幹が後ろから思わず足を出してしまったのだ。このプレーに対して鳴らされたホイッスルは当然、PKの判定。このチャンスは関が難なく処理し、沖縄かりゆしFCは狙い通りの時間帯に狙い通りのプレーで先制した。

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レノファの遅すぎた反撃

 レノファ山口FCは完全に萎縮していた。前半は幾度と攻撃の機会を作っても決定的な場面を作れず、後半は攻撃的になった沖縄かりゆしFCに押し込まれて先制を譲ってしまった。駆けつけていたサポーターの声援もむなしく、オレンジの塊は取り付かれるように後方から離れなかった。先制して守りの体制に入った沖縄かりゆしFCに対して攻撃に十分な人数を避けず跳ね返され続けた。あるいは終了前10分程度で片付けるつもりだったのだろうか。

 後半30分に児玉光史が投入された後、レノファ山口FCはようやく重心を前へと移し始める。するとサイド攻撃にも厚みが増すことで流れは徐々にレノファ山口FCに傾く。実を結んだのは後半42分になってからだった。左サイド後方から送られたフィードは上がっていたDF伊藤博幹がポストとなって競り合いながら頭で空いたスペースへ落とす。そのスペースに走りこんでいた大野達也はボールを受けるとGKと一対一のビッグチャンスを迎えた。大野達也がこのチャンスでボールをゴール右隅に丁寧に放り込んで、レノファ山口FCは土壇場で追いついた。

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 試合は新たな局面を演出せずに終了し、PK戦へ突入。PK戦は9人が蹴りあう長期戦となったが沖縄かりゆしFCが9人目のキッカー堀内省吾がボールを大きく宙に浮かしてしまい、試合終了。レノファ山口FCがPKで勝利した。

沖縄かりゆしFC 1-1
(0-0)
6PK7
レノファ山口FC
後半10分10関隆倫 後半39分14大野達也

貴重な勝ち点は逃したのか、得たのか

 痛み分けとなった。わずか3試合で得られる勝ち点9のうちの貴重な1点と2点を失ったのだ。第2試合で松本山雅FCが順当に勝っただけになおさらライバルの息の根を止めたかったはずだ。しかし残り2日しかない日程の中で振り返っている時間はない。松本山雅FC浜松大学FCに勝てば十分に一次ラウンド突破は見えてくる。失った勝ち点は大きい。しかし残りの勝ち点6をきちんと追加することで、この日に得た勝ち点の重みは増すことが出来る。過ぎ去る時間に取り残されるな。まだこれからだ。

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