AC長野パルセイロvs松本山雅FC:観戦レポート

覚えてください、信州ダービー

 サッカーのダービー・マッチと言えば何を思い出すだろうか。浦和レッズ大宮アルディージャのさいたまダービー。ちばぎんカップでお馴染みの千葉ダービー。数年は実現しなさそうな東京ダービー。サッカーどころの静岡ダービー。来年はJ1進出か、みちのくダービー。その他にも日本には同一都市・地域間のライバル関係から起きる○○ダービーというのが多数存在する。その多数の一つに北信越名物の「信州ダービー」というのを知らなかった方には覚えておいてほしい。長野ダービーではなく「信州ダービー」なのでお間違えのないよう。ダービーについて語りだすと長くなるのでまたの機会に。

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ダービー効果?豹変した松本山雅FCが開始1分で先制

 試合の入り方は対照的だった。冷静で慎重にいつも通りのサッカーを始めたのがAC長野パルセイロだ。中盤で丁寧にパスをまわして中央から松本山雅FCの守備を崩しにかかった。それに対して闘争心むき出しでかかったのが松本山雅FCだった。松本山雅FCの試合とは縁があって多くの試合を見てきたが、その多くは重要な試合ほど先に決められてから帳尻合わせのように粘り強く追いつく粗い試合をしていた。本大会でもFC岐阜SECONDに追いつかれたり、日立栃木ウーヴァSCに先制されたりと危ない橋を渡ってきている。隙を見せやすいチームという印象だ。

 ところがこの日の松本山雅FCはまるでまったく別のチームのようだった。選手一人一人が一回りずつ大きく見え、松本山雅FCの選手からはただならぬ集中力を感じた。

 試合開始と同時に、実力は上と言われているAC長野パルセイロが高度なポゼッションサッカーを披露してペースを掴み掛ける。開始直後で溢れんばかりの集中力を発揮していた松本山雅FCAC長野パルセイロのパス回しに対して慣れた様子で対応してみせた。

 そして開始1分という絶妙な時間帯に事は起きた。前線へ送り込まれたロブは強風にあおられてAC長野パルセイロDFのクリアミスを誘う。松本山雅FCのエース柿本倫明はその隙を逃さなかった。ボールを奪った柿本倫明はそのまま迷うことなくドリブルで前進する。AC長野パルセイロのDF大島崇弘の追走もむなしく、柿本はGKとの一対一のチャンスで冷静にボールをゴール右隅に流し込んだ。松本山雅FCAC長野パルセイロのミスを突いて最初のチャンスであっさりと先制点を奪った。これで試合の流れは決まった。

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AC長野パルセイロは空回りで2失点

 決勝大会への出場権を得るために、目の前の負けられない相手を倒すために攻めるしかなくなったAC長野パルセイロは気を取り直してポゼッションサッカーをやり直した。主導権を握ったAC長野パルセイロだったが、松本山雅FCにとって見ればしてやったりの展開だ。松本山雅FCは押し込まれると威力を発揮する。というのも松本山雅FCは、先日の天皇杯で浦和レッズをも沈めたお得意のカウンターサッカーを披露しはじめたからだ。

 松本山雅FCの追加点はまたしてもAC長野パルセイロのミスから起きた。松本山雅FCは23分にボールを持った柿本倫明が右サイドからペナルティエリア内に持ち込んでグラウンダーのクロスをあげた。しかしクロスは無常にも中央でターゲットになっていた小林陽介と木村勝太の背後を通過してしまう。スタンドからは一瞬だけ溜息が漏れえるが、一瞬だった。その外れたクロスを対処しようとしたAC長野パルセイロの野沢健一は痛恨と言えるトラップミスを犯す。そして事もあろうか、勢いあまってバックラインを抜けていた小林陽介のもとにボールが渡ってしまったのだ。棚からぼた餅が落ちてきた小林陽介は、いただきますと言ったかどうかは分からないが美味しくゴールの中に押し込んだ。松本山雅FCAC長野パルセイロのミスを逃さずに2点を先行する。ミスを拾っただけのラッキーな得点であるのは確かだが、こういう隙を逃さないのは勝つためには、特にこのカテゴリでは重要なことだ。

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パルセイロだって負けられない

 2点を負う苦しい展開になったが、負けられないのはAC長野パルセイロも同じだ。こちらもついに人格が変わったかのようながむしゃらな攻撃を見せ始めた。前半終了間際には右からのCKを皮切りに松本山雅FCのゴールを強襲する。ゴール前で押し込もうとするオレンジと跳ね返そうとする緑がボールを囲って入り乱れる状況が続くと、AC長野パルセイロは一度は跳ね返されたボールを土屋真が右からもう一度放り込む。ボールは綺麗に大島崇弘の頭を捕らえ、再びゴールを目指した。このシュートはポストに嫌われるが、タイミングよく詰めていたAC長野パルセイロの野沢健一が根気よくこれをネットに突き刺して1点を返した。前半のロスタイムという重要な時間に得点できるあたりは、AC長野パルセイロの試合巧者としての実力が伺える。AC長野パルセイロは決まりかけていた松本山雅FC勝利の流れを完全に断ち切る1点で後半に望みを繋いだ。

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松本山雅FCが後半に突き放して逃げ切る

 僅差のスコアで後半で迎えた時によく言われるのが「次の1点が大事」という台詞だ。この試合においても例外ではない。松本山雅FCが2?1でリードしてはいるが、ここでAC長野パルセイロが得点をすると2?2の同点となり、AC長野パルセイロにも勝利の目が見えてくる。それだけでなく追いついた勢いで逆転ということもありうる。逆に松本山雅FCが得点すれば3?1となり、AC長野パルセイロは逆転が非常に難しくなってしまう。緊迫した戦況の中、どこで爆発が起きるか分からない状況にある後半戦は正に「次の1点が大事」な展開となっていた。

 後半もビハインドを負っているAC長野パルセイロが攻めて松本山雅FCがカウンターを仕掛ける展開となる。攻めるAC長野パルセイロ、守る松本山雅FC。両者の集中力が途切れることはない。そして、先に痺れを切らしはじめたのは1点を負うAC長野パルセイロだった。AC長野パルセイロは徐々に焦りを見せだし、バランスを保っていた中盤が前がかりになっていく。松本山雅FCにとって、してやったりの展開だった。

 松本山雅FCは鐡戸裕史が最終ラインから前線にフィードを送るとこれを柿本倫明が相手DF土屋真と競り合いながら受ける。柿本倫明は迎えに来ていた小林陽介にボールを渡すと、小林陽介はさらにフリーランをしていた木村勝太に渡す。ここで松本山雅FCの選手は4人、AC長野パルセイロの選手は3人という数的優位が生まれた。木村勝太はそのままがPA内にドリブルで持ち込んで冷静にゴール左隅に突き刺した。

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 後半に貴重な追加点をもぎ取った松本山雅FCが2点差を逃げ切って信州ダービーを勝利。2年連続で地域リーグ決勝大会の全社枠を勝ち取った。やればできるじゃないか。松本山雅FCの本当の強さを目の当たりにした準決勝・信州ダービーだった。

AC長野パルセイロ 1-3
(1-2)
松本山雅FC
前半39分20野澤健一 前半1分10柿本倫明
前半23分11小林陽介
後半11分9木村勝太
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