松本山雅FCvsFC刈谷:観戦レポート

勝って当然の対戦相手

 天皇杯。カテゴリーを越えたうんたらかんたら、アジアへの挑戦権がうんたらかんたらと、今年も語れば長くなるほど国内サッカーにとって重みのある大会が幕を開けた。今回観戦したのは「松本山雅FC(長野県代表)vsFC刈谷(愛知県代表)」の一戦。一見は地域リーグvsJFLという戦力関係が歴然としているカードだが、地域リーグ上位vsJFL下位ということでかなりの好ゲームが期待されていた。今年のJリーグで言うなら「ベガルタ仙台vsジェフ千葉@ユアスタ」のような感覚か。FC刈谷が勝ってしかるべき、しかしホームの松本山雅FCも分からない。両サポーターからはエール交換をしながらも「俺たちが勝って当たり前」という自信が感じられた。

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奪って当然の先制ゴール

 試合は地域上位vsJFL下位という戦前に描かれた構図の通りの展開となった。先に仕掛けたのは松本山雅FC。開始10分の間に早くもFC刈谷の両サイドを制圧。サイドの突破からなかなかクロスを上げるには至らなかったが、コーナーキックのチャンスをいくつか得てFC刈谷のゴールを脅かす。対するFC刈谷は様子を見ながらも、長身の車東訓を中心とした3トップにボールを預けるショートカウンターで応戦する。FC刈谷はアウェーでの戦いということもあり、前半はしのぎ切るゲームプランと伺えた。

 対するホームの松本山雅FCは当然、前半でのリードを目指す。連続して得たCKのチャンスをものに出来なかった時は、さすがにJFLのチームを崩すのは難しいかと思えたが、前半30分に得意の形からようやく得点を得る。左サイドの突破に成功すると、大西が絶妙なクロスを上げる。これをエースの柿本倫明が頭で綺麗に合わせてネットを揺らした。得意としている攻撃の形からの見事な得点でスタジアムが小さく揺れる。どうやら集まった1900人(少ない?)の観客にとって、先制点は取ってしかるべきだったらしい。なんとたくましい事か。

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変化の後半。耐えた松本山雅

 後半はFC刈谷が動く。JFLでもめったに姿を見せないアマラオを後半開始から投入してきた。FC刈谷はアマラオの投入により攻撃の基点を増やした。もちろん、FC刈谷の変化は彼の投入だけではない。FC刈谷の選手は前半は温存してましたと言わんばかりに松本山雅FCのボール保持者に対して複数人で速いプレスを仕掛ける。松本山雅FCを混乱に落としいれ、攻撃を麻痺させたことで早々の同点ゴールを狙った。

 しかし松本山雅FCは一枚上手だった。相手の強襲に対してしっかりと引いて凌ぐと、すぐさまアマラオに対してもシっかりと対応してみせた。私が見た限り、松本山雅FCもおそらくは後半開始の追加点を狙っていたと思うのだが、臨機応変な対応で見事に凌ぎきった。

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天皇杯第1回戦
松本山雅FC 1-0
(1-0)
FC刈谷
前半30分10柿本倫明

敗戦ながらも確かな手ごたえ

 先週に引き続きの観戦となったが、やはりガイナーレ鳥取を打ち破った車東訓を中心にしたショートカウンターは迫力満点だ。ボールの奪取からトップへのすばやい配給、そこからのハーフの押上が的確で非常に効いていた。さらには車東訓が抑えられても臨機応変にターゲットを変更できるのは秀逸だ。今回はアウェーでの戦いということもあり、相手にいっぱい食わされた感があるが、JFLの降格圏脱出に向けて確かな手ごたえは掴めていることだろう。ホームとアウェーが逆転していたら全く逆のスコアになっていたかもしれない。ただし、言うまでもないが格下の相手に負けたのは非常にふがいない事であり、敗戦を真摯に受け止めて修正していかなくてはいけない。

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松本山雅FC、攻撃が通用することを確認

 相変わらずサイドを基点とした攻撃は破壊力がある。個人技を織り交ぜながらCMFと連動したサイド攻撃はもはや地域リーグのレベルではない。その証拠としてFC刈谷に十分通用している。敗者復活をかけた全社でも間違いなく武器になることだろう。松本山雅FCが一味違うのはそれだけでなく、突破からフィニッシュまでの一連がイメージできる点だ。サイドを基点とした攻撃を戦術に選ぶチームに陥りがちな、クロスを上げて終わりというものでなく、ゴールへ結びつく経路を選んだクロスやパスを配給できていた。また、1対1でも決して負けておらず、戦力も戦術も十分にJFLのチームを相手に通用するのを証明した。

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 この試合で最も驚いたポイントは「1-0」というスコアで松本山雅FCが勝てたことにある。昨年見た松本山雅FCの印象は1点を取ったら2点、3点とがむしゃらに取りにいくチームだった。それゆえ、守備がおろそかになって失点をゆるすケースを目撃している。今日の試合もそうなるものと思って見ていたが、1点をリードした後半は特にリスクをかけることなく難なく守りきってみせた。

 まだまだ おぼつかないシーンはある。得点直後に2点目をとりに行くのか前半の残り15分を守るのかがあやふやになったように見えたのがそれだ。しかし昨年と比べると格段に試合のマネジメントが出来ている。更に精度を上げれば全社でのベスト4はまず間違いないだろう。

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無茶は言わないが浦和レッズにも勝て

 全社の突破に向けて、更には決勝大会の突破に向けてもう一つ気になった点を挙げさせていただきたい。それは判断力の遅さだ。所々でボールを受けてから次の動作に移るまでワンクッションが空いたのが気になった。実際にFC刈谷には後半の立ち上がりにそこを狙われている。松本山雅FCの戦術は特にポゼッションを高くしなければ成立しないので、ボールが回らなくなると機能しなくなる。おそらく、地域リーグのレベルであればあのテンポで問題ないのだが、相手にそれを狙われた時にいかにシンプルなサッカー(例えば中盤をショートカットした攻撃)に移行できるかもポイントになるかもしれない。

 松本山雅FCにあと必要なのは格上の相手との対戦経験だ。得点をするためではなく、勝つために、その時々でどのような戦術を選べるかを体得していかなくてはいけない。まるでベスト4を目指す日本代表のようだが、代表チームが直面している世界の壁のような、雲の上まで伸びている壁ではないはずだ。それを実現できればJFL昇格だけでなく2年後のJリーグ参入は間違いない。

 そして第2回戦は同じくアルウィンでのJ1浦和レッズ戦となる。アジアへの再挑戦を狙う浦和レッズはまず間違いなく全力でかっかってくる。そのなかで、どれだけ松本山雅FCのサッカーが出来るか・・ではなく、どれだけ勝つためのサッカーが出来るのかを追求してみてほしい。・・あくまでも私個人の希望ではあるが。

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