ガイナーレ鳥取vs佐川印刷SC:観戦レポート

ようこそ、得点じゃんじゃん祭りへ

 夕方になり、駅前がにぎわう。浴衣を着た夏の男女が、おばあちゃんに手を引かれた子供たちが次々と集うのは夏らしくほのぼのとした光景であった。そう、この日はお祭り。鳥取しゃんしゃん祭といえば鳥取の象徴となるイベントのひとつであり、今年で45回を数える伝統あるお祭である。朝から会場設営が進み、昼には出店がそろう。昨年、地域決勝で来たときとは活気が違っていた。そして鳥取の一大イベントの「裏番組」として行われたのがこの試合「ガイナーレ鳥取vs佐川印刷SC」だった。

 話が変わるが先日ガイナーレ鳥取がJリーグ参入へ向けて呼び審査に当たるヒアリングを受けている。そこで唯一指摘されたのは観客数だった。今年はタダ券の配布を大幅に減らしたとのことで、観客動員が減るのは想定内だったという。しかし半期を終了した時点で未だに伸び悩んでおり、後期第5節を終了した時点で1試合平均2587人と基準を下回っていた。ガイナーレ鳥取にとって観客数の増加は急務だったのだ。ヒアリングを受けた直後とあってJリーグに集客力をアピールするためにもこの試合は重要であった。

 結果、4591人。招待客は確かにあった。この日は「集結!中部サポーター」と称して倉吉市の方々を招待するイベントを行っている。しかしバスの様子を見ると何百人と来た様子でもなく、観客動員に大きく影響したわけではなかった。加えて、今年から強化したという公式ファンクラブにあたるGGC会員は6000人を突破したという報告がなされた。これは「野人効果」で結論付けられるものだろうか・・。ガイナーレ鳥取は逆境をものともせず着々と地盤を固めているようだ。

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 前置きが長くなったが、JFL後期第6節「ガイナーレ鳥取vs佐川印刷SC」は今季最高の舞台・とりぎんバードスタジアムで行われた。試合はホーム2試合連続5得点中のガイナーレ鳥取佐川印刷SCに決定機を与えないまま3?0で完勝。駅前のしゃんしゃん祭に対抗して名づけられた「バードの得点じゃんじゃん祭」とはよく考えたものだ。

ガイナーレ鳥取 3-0
(1-0)
佐川印刷SC
前半30分 阿部 祐大朗
後半18分 ハメド
後半43分 鶴見 聡貴

ホームでしか見れないガイナーレの攻撃サッカー

 ガイナーレ鳥取の試合はこれまで関東の試合を何試合か観戦してきたが、ホームでのガイナーレ鳥取は大きく印象が違った。サイドバックとサイドハーフ、ウィングが連携してサイドから仕掛けるのは変わらない。しかしこの試合で目の当たりにしたのは意外にも放り込みサッカーと言われる中盤をショートカットした戦術だった。2トップの阿部祐太郎とハメドにボールを放り込むと、彼らはポストになってボールをキープする。それに後方から上がってきた中盤の選手が絡んで突破を図るという至って単純な戦術だ。単純ではあるが、4-4-2の布陣を敷いて最終ラインと中盤に微妙な間が空いていた佐川印刷SCには非常に効果的だった。サイドから中央から、あるいは後方から攻撃を仕掛けられるガイナーレ鳥取のサッカーは見ていて非常に分かりやすく、爽快だった。

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鳥取男、ハメド

 アウェーでは見られなかった放り込みサッカー。一般的にこの放り込みサッカー単体で勝つのは難しい。しかし、より威力があるサイド攻撃が脇役になることでガイナーレ鳥取の攻撃は破壊力を増していた。アウェーでもこの放り込みとポストプレーを効果的に使えれば苦労はしないはずなのだが、このサッカーがアウェーできないものか・・。ホームでは勝てるけどアウェーでは勝てない。その原因となっていた男の存在に気が付いた。ハメドだ。ガイナーレ鳥取の放り込みサッカーは核となる彼の出来に左右されてしまっている。

 別人のようだった。今まで攻撃を止める足枷としてしか彼を見れていなかったのだが、とんでもない。ハメドのボールキープと展開力はJFLのものではなかった。彼にボールが納まれば2人、3人と相手選手が付いてもボールを持ち続け、意表をついた足技一発で見方選手にパスを送るとそこには十分なスペースが生まれている。なるほど、今まで見ていたハメドにボールを集めて自滅するパターンはこの裏返しだったのか。地元の観客もそれを分かっており彼がボールを持つたびに「ハメドがボールを持てば何かしてくれる」という期待に満ちた歓声が起きる。ポストから組み立て、フィニッシュまですべてをこなす万能アタッカーがホームでしか活躍できないのはなんとも惜しいものだ。アウェーで十分にパフォーマンスを発揮できないのはコンディションのせいだとは思うが、こればかりは仕方がないのかもしれない。

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攻め手を欠いた佐川印刷SCガイナーレ鳥取に力負け・・

 試合はガイナーレ鳥取のペースで幕を上げた。放り込みとポストプレー、サイド攻撃を効果的に使って佐川印刷SCを脅かす。守っては4バックが中央に絞って佐川印刷SCのフィニッシュを許さなかった。試合は前半30分に動く。左サイドからペナルティエリア前中央に張っていた阿部にボールが送られると、阿部はそのまま前を向いて右足を振りぬく。丁寧に放たれたそれはゴール右隅にきれいに収まった。

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 後半は佐川印刷SCが攻勢に出る。佐川印刷SCガイナーレ鳥取の絞り気味の4バックの脇にできたスペースを突くとこれが面白いようにはまる。右サイドを突破すれば左サイドに展開し、左サイドを突破すれば右サイドに展開する。しかし佐川印刷SCはよく攻めていたが、決定打を打ち込むには至らなかった。

 試合を決定付けたのはハメドの目が覚める一発だった。後半17分に敵陣ペナルティエリア前でもつれると、これをフリーで拾ったハメドは迷わず左足を振りぬく。ループ気味に放たれたミドルシュートはキーパーを避けるように弧を描き、反対側のサイドネットに突き刺さった。強烈な一撃は淡々と攻めるしかなかった佐川印刷SCを十分に追い込んだ。

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ガイナーレ鳥取の救世主、岡野雅行

 そして後半37分には真打の登場となる。大歓声の中ピッチに現れたのはジョホールバルの歓喜の主役、野人岡野だ。

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 「アタッカーとしてスピードのある選手」として話を受けての入団に誰もがピッチを走り回る岡野を予想していた。しかし、実際のプレーは違った。サイドバックの尾崎瑛一郎と代わってピッチにその姿を現すと、全体のポジションを動かしてウィングの位置に入る。阿部祐太郎、ハメド、岡野雅行。J2のチームも羨む規格外の3トップが完成した瞬間だ。・・と思うと少し様子が違う。岡野はある時には中央に絞って、またあるときには逆サイドのサイドバックの位置に入ってと、まるでガイナーレ鳥取の穴に蓋をするようにめまぐるしくポジションを替え始めたのだ。これは何かの策なのか、岡野自身の独断なのか。10分間の出場時間ではいまいち分からなかったが、少なからずヴィタヤ監督に期待されたのは「アタッカー」ではなかったように見える。

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 もちろん、岡野の投入で攻撃にも変化は起きている。彼がボールを持って中央に絞ることで右サイドの展開力は確実に良くなり、サイドハーフやサイドバックの選手が気持ちよく攻撃参加するようになった。もちろん、マークが分散する効果もあったように感じた。その象徴が後半43分の鶴見の得点となる。自らのポジションを下げることで右サイドにスペースを作り、鶴見の突破を演出した。サイドの破壊力を増した残り10分間だった。佐川印刷SCには同情の余地しかない。そしてガイナーレ鳥取の攻撃は今回出場停止だった奥山が合わさればさらにバリエーションが増えることだろう。

 アウェーで勝てないのをハメドのコンディションのせいにして「仕方がないのかもしれない」で済ませるわけにはいかない。ホームで勝ててもアウェーで勝ち点が稼げなければ順位がズルズルと下がるのは言うまでもない。野人岡野はその鍵を握る。観客動員と勝ち点、人気と実力。ガイナーレ鳥取が今最も欲しい2つの要素を一気に呼び込む野人岡野はガイナーレ鳥取の救世主になる。

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