FC刈谷vsツエーゲン金沢:観戦レポート

ツエーゲンの先勝で迎えた刈谷決戦

 ツエーゲン金沢のホーム、津幡での第1戦はツエーゲン金沢が劣勢の中で後半7分にCKのチャンスからエース古部健太のゴールで先制点を奪った。ホーム&アウェーのトータルスコア(アウェーゴール無し)で決着が付けられる入れ替え戦は、ツエーゲン金沢のリードで折り返している。ツエーゲン金沢がJFL昇格を果たすにはこの試合で引き分け以上が、FC刈谷が残留を果たすには個の試合で2点差以上の勝利が必要だった。舞台はFC刈谷のホームスタジアムであるウェーブスタジアム刈谷。刈谷市は降雪が心配されたが、天気は快晴となって若干の交通の乱れが起きた程度で済んだ。

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奇策?アマラオが先発

 今回の第2戦に向けて、両者とも戦術を変えてきたのが印象的だった。大きく変えてきたのはFC刈谷。ひとつは津幡での第1戦で攻撃の核となっていた姜暁一を大胆にもベンチに下げていた。いや、姜暁一のベンチスタートはリーグ戦でもあったので、そこまで稀なことではないのだ。それより大胆なのがスタメンにアマラオを起用してきたことだ。第1試合の終盤に見せた波状攻撃で味を占めたのか、FC刈谷はアマラオを武器として振りかざした状態で試合に臨んだ。FC刈谷はリーグ戦でもスタメンにアマラオを起用した例は1試合のみ。それも45分間の出場で交代している。43歳のアマラオが90分を戦い抜けるのかと言う疑念はあったが、それが承知の上なのは間違いない。FC刈谷は始まる前からリスクを賭けて勝負に出ていた。

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 試合開始と共に主導権を握ったのはFC刈谷だった。FC刈谷はサイドから進入してはアマラオにボールを集める。ワントップ気味に構えていたアマラオがその有り余った身体能力を駆使してボールを散らしてツエーゲン金沢の守備に迫った。しかしFC刈谷の攻撃はツエーゲン金沢の守備陣に徹底して跳ね返された。それがダメならばと、FC刈谷はアマラオを経由せずともパスサッカーを披露してツエーゲン金沢の守備を崩すことも試みた。ところが個の力でツエーゲン金沢に劣るFC刈谷にパスサッカーはハードルが高かった。

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最後の最後に見せたツエーゲンの形

 ツエーゲン金沢については試合に入ってからその変化に気づく。これまでのツエーゲン金沢は非常に低い位置で守備をしていた。それこそ最終ラインでボールを拾うことが多かったのだが、この日はかなり高い位置からボールを奪いに行っていたのが印象的だ。敵の誰がボールを持ったときに誰がプレスをかけに行くのかがはっきりしており、特にFC刈谷の起点となりうるサイドでは複数人で徹底的に潰していった。それだけではない。ツエーゲン金沢はボールを奪った後にはもれなくショートカウンターを仕掛けていた。それも北信越の緑チームのお株を奪うような的確なショートカウンターだった。ツエーゲン金沢はここ1週間、静岡でキャンプを張ってからこの試合に臨んだという。キャンプで修正できるのはせいぜいセットプレーのバリエーションを増やす程度だと思っていたのだが、わずか数日で核となる戦術を作り上げてしまったのは恐れ入る。これもそれ相応の戦力が整っていたからなせる技なのだろう。

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 得点はツエーゲン金沢のショートカウンターから生まれる。前半31分に古部健太が左サイドでボールを受けると、そのまま前進してクロスを上げる。このクロスは一端弾かれてしまうが、右サイドにこぼれたその先には根本裕一がフリーで構えていた。根本裕一は迷うことなくその左足を振りぬく。ボールは目が覚めるぐらいまっすぐな弾道を描いてゴールに突き刺さった。かつて美白のロベカルなどという珍名を付けられていた元U-23日本代表が勝負を決める貴重な追加点を奪った。

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 スコアが動いたことで有る程度の変化を期待してみたが、期待はずれだった。第1試合の観戦レポートでツエーゲン金沢に対して「FC刈谷の変化に対応できるか」と書いてしまったが、どうやら変化に対応できなかったのはFC刈谷の方らしい。FC刈谷は反撃の手を既に出し尽くしてしまっていた。ちなみにアマラオの起用は確かに武器にはなりえたが、前線での運動量が無くなった分ツエーゲン金沢はかなり守りやすかった様子だった。

FC刈谷の超攻撃体制

 後半に入っても淡々と時が流れる。ツエーゲン金沢が守りに入らず3点目を狙いに行ったのはかなり印象的だったが、そのための効果的な攻撃が出来ていたかというとそうでもなかった。問題はビハインドのFC刈谷だ。FC刈谷が動いたのは後半24分。FC刈谷はついに攻撃の核となる姜暁一を投入した。これによりFC刈谷は右サイドから崩すことが出来るようになる。後半32分にはその姜暁一が右サイドからPA内の深い位置までドリブルで侵入してシュートを放つ。角度のないところから放たれたシュートは木寺浩一の脇をすり抜けてゴールへと向かった。しかしボールはそのままゴール前を横断してしまい、ゴールラインを割れず。フリーで詰めていたアマラオと森山大地も一歩が届かずに絶好のチャンスを逃してしまった。

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JFLの意地を見せろ!集まったJFL門番連合

 この日、FC刈谷のゴール裏をよく見るとその異様な光景に気がつく。その一角を染めていたのは赤たすきのユニフォームだけではなかったのだ。色とりどりで飾られたその正体はJFL門番連合と証したFC刈谷の「戦友」たち。長く一緒に苦楽を分かち合ってきた仲間がFC刈谷の応援に駆けつけていたのだ。Jリーグでは他チームのユニを着てゴール裏で応援するのはタブーとされているが、それを許容してしまうJFLチームサポ同士の絆は非常に不思議なものがある。「刈谷では負けられない。」 彼らの後押しはFC刈谷の意地の一発を生み出す。

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 後半42分にFC刈谷はゴール正面で直接FKのチャンスを得た。全員が引いて二次攻撃に備えるツエーゲン金沢に対して、キッカーの日下大資はゴールをめがけて右足を振りぬいた。ボールは絵に描いたような弾道で壁をすり抜けて、ゴール左上に突き刺さった。このゴールで1点を返したFC刈谷は勢いに乗ってツエーゲン金沢のゴールに迫る。GKの山本剛も交えて後方から攻撃を組み立てる超攻撃的な姿勢を見せたが覆すには至らなかった。

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安堵の金沢、前途多難はまだまだ続く

 長い、長いロスタイム4分を終えたときツエーゲン金沢の選手たちは歓喜に満ちていなかった。確かに喜びを表す仕草は見せていたが、その表情は安堵というのが相応しいように見えた。今シーズのツエーゲン金沢は北信越4強のうちで真っ先に離脱してしまった。さかのぼっては昨年の今頃はチームが崩壊して解散騒動にもなっていた。その度にツエーゲン金沢はもう駄目だと思った。それでも10月の全社で札大GP、カマタマーレ讃岐といった強豪に競り勝って決勝大会の舞台を勝ち取ると、高知での一次ラウンドでは関西王者の三洋電機洲本との激戦を制した。松本では日立栃木ウーヴァSCに完敗して一時は敗退を覚悟をしたものの、Y.S.C.C.から勝ち点を奪った。1年勝負が常の地域リーグで、その度に寿命を縮めたことだろう。長い、長い、1年間の、暗い、暗い、トンネルを抜けた。ツエーゲン金沢の皆さん、おめでとうございます。

 このタイミングで何ですが、水をささせてください。無駄に熱かった北信越のトンネルは抜けましたが、ツエーゲン金沢の勝負はまだこれからです。来年は立ちはだかるJリーグの門番達をなぎ倒さなくてはならないというのは当然あります。ツエーゲン金沢にはそれに加えて石川・金沢という土壌にツエーゲンという名前を植える作業が待っています。Jリーグを目指すと言っている以上、観客動員を気にする必要があります。まだまだ多くの苦労が待ち構えていることでしょう。今年見せた金沢の底力を来年もJFLで見せてください。まずは今オフで少しでも多くの幸がツエーゲン金沢に訪れることを願います。そして願わくば、再来年、FC刈谷がJFLに戻ってくるまでにJリーグ昇格を決めんことを。

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 鳴り止まないFC刈谷コール。感極まって途切れ途切れの場内アナウンス。顔を上げられない選手達。降格の瞬間なんかに立ち会うものではない。お疲れさまでした。来年は笑って年を越しましょう。

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