ツエーゲン金沢vsFC刈谷:観戦レポート

迎えてしまった入れ替え戦

 JFLのフラッグが高らかと掲げられ、両脇にはツエーゲン金沢FC刈谷のフラッグがなびいていた。ツエーゲン金沢はくしくも北信越4強のうち初めてJFLの主催試合に出ることになった。これが宜しい状況なのか宜しくない状況なのかは結果論でしか語れないとして、来年、このJFLのフラッグと共に掲げられるのはFC刈谷ツエーゲン金沢のうちいずれか1チームのみとなる。この素晴らしい2チームが来期のJFLで同じピッチに立つことがないと言う現実が何よりも悲しい。入れ替え戦というのは何と生産性の悪いことか。クラブの運命を賭けた180分のうちの90分が津幡運動公園陸上競技場で行われた。

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FC刈谷のワンサイドゲーム

 試合は序盤からFC刈谷が一方的に攻め立てた。前線の選手をポストとしてサイドから、中央からと自在に起点を変えては攻撃を仕掛けてツエーゲン金沢を押し込んだ。前半24分には後方からのフィードに対して姜暁一がワントラップで抜け出し、GKと一対一の局面を作る。これはGK木寺浩一の冷静な対応の前に得点することが出来なかったが、FC刈谷はひたすらチャンスを作り続けた。

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 ところがFC刈谷ツエーゲン金沢を圧倒していたかと言うとそうでもない。ツエーゲン金沢はポストやターゲットとなる選手に対してしっかりと体を寄せて対応していた。ツエーゲン金沢は集中した守備でFC刈谷の選手に殆ど決定的な仕事をさせていなかった。

ツエーゲンが生み出した前半唯一の決定機

 ツエーゲン金沢は守備を固めながらも少ない攻撃機会からチャンスメイクを試みる。前半27分には左サイドの展開から山道雅大が中央でボールを保持する。FC刈谷の選手の注意を完全に引き付けると、右サイドから根本裕一がゴール前へ走りこんだ。山道雅大は根本裕一へ絶好のタイミングでスルーパスを通すと、ボールを受けた根本裕一はあとGK山本剛をかわすだけだった。しかしこのチャンスは根本裕一のシュートミスで枠を大きく外れてふいにしてしまう。前半は両チームそれぞれ流れの中から1回ずつ絶好のチャンスを作ったが決めきれなかった。

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後半勝負のツエーゲン金沢が狙い通りに先制

 ところでツエーゲン金沢の全社からの成績を見ていると面白いことが分かる。それはツエーゲン金沢が上げた得点は18点中12得点が後半以降に上げられていることだ。それもそのはずで、ツエーゲン金沢は全社のときから一貫して前半守備・後半勝負の試合運びを行ってきた。ツエーゲン金沢がどのような試合運びをすうるかというのを知っていると前半にいくら押されていても、その前半を守りきったところで後半に期待をかけられる。この日も例外ではなかった。ツエーゲン金沢は後半の立ち上がりから相手の最終ラインにターゲットマンを3・4人配置すると、前半の戦いからは想像ができないぐらいFC刈谷を押し込んでみせた。

 そして後半7分、ツエーゲン金沢は右サイドのCKのチャンスを得ると、これが得点につながる。キッカーの三原雅俊がニアサイドに低いクロスを上げると、そこに走りこんだのはエースの古部健太だった。古部健太はフリーでボールを捕えると、そのまま右足を振りぬいてボールを思い切りよく蹴り込む。古部健太の放ったシュートはGK山本剛のわきをすり抜けてゴールネットに突き刺さった。比較的おとなしく見ていた観客もエースのゴールに沸かないはずがない。リードを奪ったツエーゲン金沢はその後もスタジアムの雰囲気に推されるようにFC刈谷のゴールを脅かし続けた。

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ツエーゲン金沢FC刈谷の猛攻をしのいで先勝

 ツエーゲン金沢の攻撃が沈静化したところでFC刈谷が徐々にペースを取り戻す。FC刈谷はサイドの主導権を握れるようになるとクロスを中心にツエーゲン金沢の守備を脅かした。後半35分にはCKから最後は高橋良太が強烈なシュートを放ったが、これはGK木寺浩一のセーブとDF園田清次の的確カバーで跳ね返された。FC刈谷は確かに効果的なシュートを放つことは出来たが、肝心のシュートが枠になかなか飛ばずに苦労してしまった。

 FC刈谷はエースの決定力の差をツエーゲン金沢に、古部健太に見せ付けられてしまった。ツエーゲン金沢がホームで1点のリードを奪って入れ替え戦を折り返した。

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ホーム・FC刈谷に勝機はあるのか

 第1戦を終えてビハインドを負ったFC刈谷ではあるが、まだ十分にポジティブな捉え方が出来る。それは終始攻め続けていたFC刈谷が2戦目でも得点の機会が多く作れるのは想像に容易いからだ。後半の終盤に見せたアマラオの身体能力を生かしたパワープレーもかなり有効な攻撃手段だった。FC刈谷はチャンスメイクが出来ているのであとは決定力の問題と言える。私がリーグ戦でガイナーレ鳥取に4?2で勝った試合を目撃している当事者であるからか、FC刈谷がこのまま無得点で終える未来を思い描けない。

 またFC刈谷は攻撃面以外でもルーズボールをきちんと拾えていたり、戦況に応じた戦い方の選択が出来ている。さすがJFLのチームと言うべきか、ツエーゲン金沢と比べるとチームとしての戦い方に長けているのが分かった。第1戦を受けて、ホームとなる第2戦では戦い方を変えてくるのはまず間違いがない。

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ツエーゲン金沢は逃げ切ることができるか

 ツエーゲン金沢は第一試合のリードで優位な立場となった。確かに1得点は十分なリードではない。第2戦がFC刈谷のホームであることも考えれば危険極まりないスコアという見方をするのが普通だ。

 しかしながらこの日のツエーゲン金沢の守備とFC刈谷の攻撃を見る限りだと、楽観すること「も」出来る。なぜならツエーゲン金沢FC刈谷の終盤の波状攻撃を割と難なくしのぎきったのだから。個の力で勝っている分、このまま逃げ切るという勝ち方は意外と現実的なのかもしれない。

 もちろん楽観しきるわけにはいかない。ツエーゲン金沢は決勝大会最終戦のY.S.C.C.戦で引いた相手に対して猛攻の中から1点をもぎ取ってこの舞台に立っている。立場が逆になったところでFC刈谷に意地の一発を決められる可能性は十分過ぎるほどにある。

 ツエーゲン金沢がリードを追いつかれてFC刈谷に主導権を渡さないためには、立ち上がりに主導権を握って追加点を取れるのが理想的な戦い方だ。ところが、そうは言ってもツエーゲン金沢がそこまで柔軟に戦い方を変えられるチームではないのを知っている。きっと第2戦でも前半に引いて守り、後半の出だしに勝負をかけてくる戦い方をするのだろう。

 ツエーゲン金沢にとってポイントとなりそうなのは2点。FC刈谷がホームで戦い方を変えてきたときにきちんと対応しきれるか。万が一、FC刈谷に追いつかれたときに落ち着いて取り返しにいけるか。ツエーゲン金沢のチームとしての完成度が問われる試合になりそうだ

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ツエーゲン金沢が絶対に負けられない理由

 試合開始前、満員になったメインスタンドの観客にコアサポーターから赤いボードが配布された。Jリーグの試合で度々見られるコレオをやろうという試みだ。このボードには一枚一枚にサポーター有志によるメッセージが書かれていた。聞けば前日の夜中までかけて作成していたと言う。

 この日の観客動員は2176人。どうしても松本の1万人と比べがちになってしまうが、地域リーグというカテゴリを考えれば十分すぎる数字だ。増して、ツエーゲン金沢の入れ替え戦進出が決まったのは1週間前のこと。会場が発表されたのも今週の月曜であり、十分なプロモーション活動が出来なかったことも考えればかなり集まったことになる。

 選手入場時に赤いボードがメインスタンドを埋め尽くした。そして試合が始まると最初は大人しく見ていた観客が殆どだったが、ツエーゲン金沢のリードもあって後半にはサポーターの応援に自然と手拍子を合わせる層が現れたり、拍手や歓喜、ため息などの喜怒哀楽を表すようになった。地域間で比べるのはお行儀がよくないが、サッカーが根付いている地域はこの後半の盛り上がりを最初から素直に表現できる。それを思うと金沢におけるサッカー観戦文化は国内レベルでもまだ生まれていない段階にあるのかもしれない。どうやら金沢にサッカー文化が根付くための秘められた可能性は非常に高いらしい。

 ツエーゲン金沢はJFL昇格が一つの起爆剤となれば一気に観客数を伸ばすことが出来るはず。もちろん本来ならばJリーグやJFLの名前を借りずして開花できるのがいいに決まっている。しかしツエーゲン金沢はJのブランドを利用することでクラブや地域の発展に貢献する道を既に選んでおり、半ば後戻りが出来ない状況にあるのが現状だ。

 金沢には新しいサッカー文化の芽が開きかけようとしている。サポーターを含めたクラブ全体がJFLという一つの目標に向かって力を総力を発揮している。それに応えた石川県民、金沢市民がいる。残された時間は残り90分。この残り90分の勝負は金沢におけるサッカー事情の運命を賭けた戦いになることだろう。そしてこの入れ替え戦に何かしら重要な事情が賭かっているのはFC刈谷も同じである。

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