日立栃木ウーヴァSCvs松本山雅FC:観戦レポート

慌しく始まった決勝戦

 第1試合のPK合戦が長引いたが故に、Y.S.C.C.の選手がピッチ脇で挨拶をしている中で入場が始まると言う奇妙な光景だった。第1試合の結果を受けて松本山雅FCの昇格が確定した。1万人が集まったスタジアムは既に最高潮のボルテージになっており、優勝をかけた最終戦は最高の雰囲気の中で開始を迎えた。

ここからJリーグ-日立栃木ウーヴァSCvs松本山雅FC

日立栃木ウーヴァSCがカウンターから先制

 立ち上がりから試合の主導権を奪い合うめまぐるしい展開となる。互いに最終ラインを押し上げあっては攻撃を仕掛けた。激しい主導権の握り合いは、大観衆に後押しされるように松本山雅FCへと渡っていった。松本山雅FCは右サイドを中心に突いて日立栃木ウーヴァSCのゴールを襲う。前半7分には木村勝太が右サイドを抜け出して中央でフリーになって走りこんでいた小林陽介に的確なクロスを送り込む。小林陽介はこれを難なくゴールに叩き込んだが、すでに木村勝太にオフサイドの判定が下されていた。惜しいシーンに会場の熱気がさらに増す。

ここからJリーグ-日立栃木ウーヴァSCvs松本山雅FC

 ところが先制したのは日立栃木ウーヴァSCだった。日立栃木ウーヴァSCは前半14分にピッチ中央で森田真司がボールを受けると、松本山雅FCの守備が整っていない左サイドへ前田和也が走りこむ。森田真司は前田和也が走りこんだ先に正確なパスを送り込み、それを受けた前田和也がゴールを決めるのは非常にたやすい事だった。

ここからJリーグ-日立栃木ウーヴァSCvs松本山雅FC

今度こそ同点

 松本山雅FCが優勝するには勝たなければならなかった。それゆえ、先制点まであと少しのところで奪われたゴールは非常に痛手になったはずだ。拮抗していただけに尚更である。

しかし松本山雅FCは動揺しなかった。松本山雅FCは何事もなかったかのように淡々と高い位置で奪ってはショートカウンターを仕掛けた。

 待望のときは22分に訪れる。スローインの展開から右サイドを抜け出してドリブルで前進していた木村勝太はサイドを侵入しきる前にファーサイドの大西康平の足元へ的確なクロスを送りこむ。大西康平はそのまま左足で合わせてゴールに叩き込んだ。

ここからJリーグ-日立栃木ウーヴァSCvs松本山雅FC

日立栃木ウーヴァSC松本山雅FCの関係

 日立栃木ウーヴァSC松本山雅FCは実は10月の全社ですでに対戦していた。しかも3連戦の大会3日目という点まで同じだ。日立栃木ウーヴァSC松本山雅FCは何かしら運命めいたものがあるのかもしれない。そのときは日立栃木ウーヴァSCが前半でリードを奪い、松本山雅FCが後半の終了間際に同点に追いつく劇的な試合となった。結果的にPK戦で松本山雅FCが勝利しているのは言うまでもない。それを見た地域リーグファンにはかなりの名勝負として記憶されている。この日も時間帯は違えど、日立栃木ウーヴァSCが先制し、松本山雅FCが追いつく形で1?1の同点になった。今季2度目の対戦はどう展開されるのか。

 このまま折り返すと思われていた前半43分に試合が動く。左サイド後方でボールを持っていた鐵戸裕史が右サイドの深い位置にボールを送り込むと、そこに走りこんでいたのが柿本倫明だった。1万人はこの日3回目となるシチュエーションを目の当たりにすることになる。柿本倫明はそのまま7分のオフサイドのシーンを再現するようにグラウンダー性のクロスを送ると、抜け出していた小林陽介がそれをゴールに叩き込んだ。

 後半も地域リーグとは思えないぐらいに上質で激しいサッカーが繰り広げられた。松本山雅FCがやや押し気味に試合を進める前半から変わらぬ展開。歓喜のときを迎えた。

ここからJリーグ-日立栃木ウーヴァSCvs松本山雅FC

アルウィンで開催した意義

 慌しく試合が始まって大観衆での応援を耳にしたとき、思わず涙腺が緩んだ。このブログを始めて以来、松本山雅FCとは縁があって昨年の全社から見てきた。昨年のバードでの松本山雅FCも当然目の当たりにしており、事あるごとに松本山雅FCが落胆する姿を目の当たりにしてきた。しかしどんなに失敗を繰り返しても、諦めずに会場に駆けつけては後押しをする松本山雅FCのサポーターに感銘を受けてきた。昨年の全社初戦・奈良クラブ戦からひとつひとつ松本山雅FCの試合を思い出しながら観ていると思わず感極まってしまった。

 この日、アルウィンに駆けつけたのは10965人。初日から「最終日は1万人は集まる」と耳にしていたが、かなり疑よりの半信半疑だった。もちろん、全員が松本山雅FCのサポーターではない事は差し引いているが、松本山雅FCが念願のJFLに昇格する瞬間を目の当たりにしようと駆けつけた人がこれほどいたというのは衝撃だ。たかが4部リーグのチームでも多くの人を巻き込めるのを実感した。

ここからJリーグ-日立栃木ウーヴァSCvs松本山雅FC

 決勝ラウンドが松本山雅FCのホームで行われることに関して賛否両論が起きた。アルウィンで開催すれば大勢の松本山雅FCファンが駆けつけるのは十分想定でき、松本山雅FCの絶対有利は分かりきっていた。集中開催であるが故に中立開催でなくてはならないのは確かで、考慮すべき事態ではある。しかしその裏で長野県サッカー協会の努力があってのものなのは想像が出来るし、あのスタジアムの雰囲気を肌で感じた人間としてみれば暗に批判できなくなる。アルウィンだったからこそより多くの人が感動の舞台に立ち会うことが出来たのだ。

 ではファンが多い方に合わせるのがいいのかと言われれば言葉を詰まらせてしまうが、サッカー協会や社会人連盟を動かすほどの人気を作り出したのも松本山雅FCというチームの強さの一つであろう。ファイナルの舞台がアルウィンで良かった。

 決勝大会に挑んで3年目で掴んだ全国の舞台。「頂=Jリーグ」へ向けて一気に駆け抜けるのか、あるいはJFLで再び地盤を固めるのか。松本山雅FCの挑戦はまだ途中に過ぎない。

 余談になるが、2日目の夜に松本駅前にある松本山雅FCサポーターが集まるという店に連れていってもらった。店の中には歴代の松本山雅FCの記事やポスターが飾られており、右から左から松本山雅FCの話題が聞こえてきた。Jリーグのクラブでも駅前にサポーターが集まれる店はどれだけあるだろうか。松本山雅FCがいかに松本市に浸透しているかというのを肌で感じることが出来た。あの温かい雰囲気は忘れられない。

UVA SCは飛躍した栃木県の象徴

 本大会で最も輝いていたのは日立栃木ウーヴァSCで間違いない。日立栃木ウーヴァSCの豊富な運動量を生かしたパスサッカーは一次ラウンドで最も激戦区となったBグループを突破し、決勝ラウンドでもY.S.C.C.に逆転勝ちをし、ツエーゲン金沢に3?0で完勝した。日立栃木ウーヴァSCのこれだけの成績はかなり衝撃だ。松本山雅FCには敗れたが、大アウェーの状況で先制点を奪った強さは本物だ。

 加えて日立栃木ウーヴァSCのJFL昇格は栃木県にとって非常に重要な意味がある。J2では栃木SCがデビューを果たし、日立栃木ウーヴァSCはJFLへ昇格した。また関東リーグでは日立栃木ウーヴァSCに代わってヴェルフェたかはら那須が一部昇格を果たしている。これで栃木県におけるサッカー環境はかなり充実したものとなった。また、国体で栃木県選抜が宮城県や鹿児島県といった強豪を下して3位に入賞しているのもひとつの成果といえる。県単位でみたとき、栃木県のサッカー事情はかなり明るくなっている。JFLで日立栃木ウーヴァSCがどのような立場に立って戦うことになるのか、今から非常に楽しみだ。

ここからJリーグ-日立栃木ウーヴァSCvs松本山雅FC
関連ニュース
関連試合
関連レポート

検索

Twitter

Facebook