レノファ山口FCvs松本山雅FC:観戦レポート

戦場へ

 陽気に包まれて朗らかな雰囲気になっていた第一試合。スタンドの観客は時間の経過と共にみるみるうちにその量を増した。沖縄かりゆしFCの勝利が確定した頃にはすっかり緑とオレンジで色分けされていた。スタンドの中央にはテレビカメラの三脚が4台設置されており、いずれも長野県から来たマスコミだという。いや、山口県から来たそれもあっただろうが、その確認を怠っただけだろう。そして第一試合の余韻を残したまま他会場の結果を気にし始めた頃、緑の大声援がその余韻をかき消した。続いてオレンジの声援が割ってはいると、長閑な会場は戦場へとその姿を一変した。第二試合はレノファ山口FC松本山雅FCの一戦。レノファ山口FCは90分勝ちで、松本山雅FCは引き分け(=PK戦突入)以上で一次ラウンド突破が決まった。

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2大会連続の突破へ、レノファの大作戦

 1日目から観戦していてレノファ山口FCには個人的に物足らなさを感じていた。沖縄かりゆしFC戦にしても浜松大学FC戦にしても非常にスロースタートで、いずれも攻撃のスイッチが入ったのは後半の終盤になってからだった。こんなはずはない。私が知っているレノファ山口FCは最初から最後まで戦えるチームであり、単純なカウンターだけでなく十分効果的な攻撃を繰り出せるはずだ。しかしここ2戦のレノファ山口FCからは全くやる気が感じられず、期待はずれだった。なぜレノファ山口FCは本気を出さないのだろうか。

 その解は3日目にして明らかになる。この日のレノファ山口FCはキックオフ直後から非常に集中しており、ボールを一生懸命追いかけては積極的に攻撃を仕掛けた。なるほど、レノファ山口FC松本山雅FCと一騎打ちになることを想定して体力をセーブしていたというのか。非常に賢い選択だ。レノファ山口FCは最初に沖縄かりゆしFC、最後に松本山雅FCと当たる日程のトリックを利用して一次ラウンドを突破する作戦だったらしい。

 ところが結果的にこの読みは大きく外れる。1年前は互角の相手だったが1年たった今年の実力差は雲泥にまで広がっていた。この日も松本山雅FCの完勝劇が幕を開ける。

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あくまでも勝利を求めた松本山雅

 試合に先立って注目していたのが松本山雅FCの戦い方だった。引き分け以上で突破が決まる状況にある松本山雅FCは最初から引いて90分間守り抜く姿勢をとるのか、あるいはあくまでも勝利にこだわって点を取りに行くのか。いずれも一次ラウンド突破をするためには有効な作戦となる。松本山雅FCが見せた答えは後者だった。松本山雅FCは序盤から積極的にレノファ山口FCのゴールを襲っていった。

 最初に主導権を握ったのは松本山雅FCだった。高い位置からプレスをかけてレノファ山口FCを押し込み、サイドからショートカウンター気味に攻撃を組み立てた。レノファ山口FCもここ2戦と比べものにならないくらい動きにキレがあり、カウンターから松本山雅FCのゴールを脅かし続ける。カウンター対カウンター。両者の得意とする戦術がかみ合う手に汗を握る時間帯がしばらく続く。

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松本山雅が先制

 試合が動いたのは前半23分のことだった。松本山雅FCは右サイド後方から最終ラインの裏へと絶妙なフィードを送る。送られたフィードに対して10柿本倫明が上手くトラップして最終ラインを突破する。レノファ山口FCの守備の隙を突いた最初のビッグチャンスが演出されると、柿本倫明は冷静にボールを持ち直してGKの位置を見ながら丁寧にゴールへ蹴り込んだ。運命を握る待望の先制点は松本山雅FCが掴んだ。

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 後半も松本山雅FCが主導権を握り、攻勢で進める。後半11分に阿部琢久哉が右サイドを突破すると、そのままクロスを上げる。ファーサイドで合わせたのは木村勝太だった。木村勝太は頭でそれを捕らえると、軌道を鋭角で変えられたボールはポストを強襲した。一度は阻まれたものの小林陽介がきっちりと詰めて押し込み、勝負を決定付ける貴重な追加点とした。

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レノファは兒玉投入も状況を打開できず

 2点のビハインドを追ったレノファ山口FCは一次ラウンド突破に3得点が必要となった。とにかく攻めるしかないレノファ山口FCは後半13分にスーパーサブの兒玉光史を投入する。防戦一方となっていた試合の流れを変えようと試みた。

 しかし松本山雅FCにとってその交代は全く意味のないものだった。昨年は十分効果的だった兒玉光史のスピードとキープ力、シュート精度は松本山雅FCにとって全く脅威とならなかった。

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松本山雅が圧勝で1年越しの雪辱を果たす

 主導権を掴んで放さない松本山雅FCは更に得点を加える。後半24分に木村勝太が左サイドからPA内に持ち込んでシュートを放つ。一度はGKに阻まれるが、こぼれ玉を北村隆二がしぶとく詰めてゴールネットを揺らした。

 セーフティリードを得た松本山雅FCは、食らいつくレノファ山口FCに一度も決定機を与えないまま90分を戦い抜いた。強すぎる。たった1年でこれほど差が出るものなのだろうか。松本山雅FCは1年前の雪辱を果たして決勝ラウンド進出を果たした。思い出しただけで身震いがとまらない。

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レノファ山口FC 0-3
(0-1)
松本山雅FC
前半24分10柿本倫明
後半11分11小林陽介
後半24分7北村隆二

想像以上の実力を発揮した松本山雅

 松本山雅FCは3戦で3勝はもちろん、12得点と1失点を記録した。これはグループAのY.S.C.C.が記録した12得点無失点に続く記録だ。しかもそれぞれのグループのチーム事情を考慮すると、グループCの方が難易度が高い。松本山雅FCの突破を予想した方は多いと思うが、松本山雅FCが断トツで突破するのを予想した方は何人いただろうか。自分で言うのも何だが、松本山雅FCの完勝劇を予想するのは不可能だった。

 この日の試合を見て、ある試合を思い出した。それは10月30日に秋田県で行われた天皇杯の第3回戦、FC岐阜に4?1で敗れた試合だ。松本山雅FCFC岐阜の速いプレスに苦しんでボールを回せてもらえず、2点を先攻される。一度は追い上げたものの終盤に失点を重ねて完敗した。そのときの観戦レポートはこう締めくくってあった『逆に今日やられたような戦い方を浜松大学FCや沖縄かりゆしFC、レノファ山口FCにしてやればいい。決勝大会まであと21日。さらに一回りたくましくなった雷鳥軍団を鳥取で目撃するのを楽しみにしている。』と。まさか本当に体現してしまうとは。松本山雅FCレノファ山口FCにかけたプレスの間合いはFC岐阜松本山雅FCにしたそれと非常に酷似していた。

 J2規格のプレスをかけるチームは地域リーグにはない。そこまできつくしなくてもボールが取れるからだ。それは上位カテゴリとのTMでも然り。真剣勝負の場でそれをされると何も出来なくなることを身をもって体験した松本山雅FCだからこそ実践できたといえる。松本山雅FCは10月に行われた全社からまるで別のチームのように一回りたくましくなっていた。おそれいる。

 ゆるぎない強さを見せ付けた松本山雅FCはグループCの1位を獲得し、ホーム・アルウィンでの決勝ラウンドへと駒を進める。敵はY.S.C.C.日立栃木ウーヴァSCツエーゲン金沢の3チーム。敵の実力は一次ラウンドで戦った3チームの比ではない。松本山雅FCにとってさらに難しい試合が続くが、何人集まるであろうホーム・アルウィンの観衆の前で最後まで戦い抜きたい。

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