栃木SCvsアルテ高崎:観戦レポート

チャンスは逃さない。勝負強さを発揮した栃木SCが一抜ける

ロスタイムが掲示されると、ベンチにいた青ジャージの軍団がいそいそとタッチライン沿いに並ぶ。そして主審がセンターサークルを指すのを確認をしたかも分からないままピッチに流れ込み、青い大きな塊が出来る。メインスタンドは見渡す限りに黄色い腕が生え、電光掲示板にはこれでもかと言うぐらい画面いっぱいに明朝体で『歴史的瞬間』と表示される。栃木SCがJリーグ参入条件である4位以内を確定した。

前期を首位で折り返しながら後期は13節までたった3勝しかできず、その時点で9戦勝なし。一時は今年も駄目かと思われたが、いいタイミングで最下位を争う三菱水島FCとアルテ高崎との連戦が入り、そのチャンスを逃すことなく2試合で勝ち点6をしっかりもぎ取り、目標を達成した。
ダッシュ

栃木最高!

「栃木最高!」試合終了後に行われたセレモニーでキャプテンの佐藤悠介はそう叫んで締めくくった。キャプテンの挨拶に会場は最高の盛り上げを見せる。この日、6得点全部に関わる活躍を見せた彼の言葉には重みがあった。

JFL前期第10節MIOびわこ草津戦後のインタビューで何とも奇怪な名言を残している。それは不満の残るジャッジをした主審に対して発せられた「審判最高」という言葉だ。このインタビューは栃木のローカルで放送され、ネット上で話題となり、審判員に対する侮辱的な発言ということで3試合の出場停止も受けている。

キャプテンといえば辛いときでも楽しいときでもチームメイトを鼓舞し、精神的支柱となる存在をイメージする人が多いだろう。日本代表ではザルツブルグの宮本やジュビロ磐田の川口がイメージしやすい。しかしこのチームのキャプテンは違う。すぐに頭に血が上り、喧嘩とあらば真っ先に向かってしまう。この日も大事には至らなかったが小競り合いを起こしている。

それでも佐藤悠介はキャプテンとしてファンに慕われている。普通は不思議に思うものだが、そうでもない。彼は2つの点で信頼されている。まず一つ目は確固たる技術と展開力でチームの心臓として君臨していることにある。全ての攻撃は佐藤悠介から始まると言っても過言ではない。精神的支柱である前にチームの大黒柱なのである。

二つ目は彼のサッカーに対する姿勢にある。J1昇格を果たした東京ヴェルディを解雇され、誰もが他のJ2のクラブに行くものだと思っていたが、彼が選んだのはJFLの栃木SCだった。栃木SCを選んだのは山形時代にお世話になった柱谷幸一監督の誘いと言うのが大きく影響しているのは有名な話だ。そして、尊敬するという名波の背番号7をつけると、JFLの舞台で良くも悪くも暴れてみせた。多くのクラブを渡り歩く中で得た信頼できるひとと憧れの人という歪みのない精神的支柱が彼を支えている。サッカー選手でなくとも明確な目標がある人ほど魅力的な人もない。一直線に審判にぶつかってしまう態度も含めて、多くの人に支えられながらも、サッカーに素直すぎるほど真っ直ぐに向き合う姿勢が栃木の人々の心をガッチリと掴んだのだ。

「栃木最高!」この言葉はまるで「審判最高」という迷言を書き換えるように聞こえた。「チームには迷惑をかけてキャプテンとして何が出来たかわからないけれども、とにかく最低限の目標である4位以内というものを確保できた。」と言う思いが詰まった一言である。不器用な佐藤悠介らしい真っ直ぐな言葉だ。

「優勝こそ出来なかった」とは言うが、今年の目標はあくまでもJリーグ参入条件である4位以内である。十分過ぎる結果を出したチームを誰が責めよう。最高の舞台で最高の結果を残した栃木SCに賞賛と激励を贈りたい。

ゴールからスタートへ—栃木の夢は終わらない

「強い思いがあれば必ず夢は叶う。」柱谷幸一監督が子供たちへといって贈った言葉である。成功者の言葉ほど重いものはない。その言葉はしっかり子供たちの心に刻まれただろう。サッカーチームがサッカーで夢を与えることが出来た。素晴らしいことではないか。監督は続けて1年でJ1昇格を宣言した。まったく兄弟そろって口だけは達者である。しかし誰も疑うことはしない。栃木にはまだまだ夢がある。
栃木SC記念

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