FC町田ゼルビア、V・ファーレン長崎、ホンダロック。死闘に幕が降ろされる
11月22日、3都市4会場で開幕した地域リーグ決勝大会は石垣に会場を移して6日間の死闘に幕を降ろした。優勝はFC町田ゼルビア、準優勝はV・ファーレン長崎、3位ホンダロック、そして4位にレノファ山口FC。6試合といえば週2で試合をしたとしても3週間分。9日間がどれだけ濃厚だったかお分かりいただけるだろうか。そして地域リーグのベスト4が出揃った。忘れないうちにおめでとうと述べておく。
ホンダロック | 1-2 | FC町田ゼルビア |
V・ファーレン長崎 | 1-0 | レノファ山口FC |
順 位 |
チーム | 町田 | 長崎 | ロック | 山口 | 勝 点 |
得 点 |
失 点 |
得 失 差 |
1 | FC町田ゼルビア | △0-0 | ○2-1 | ○2-0 | 8 | 4 | 1 | +3 | |
2 | V・ファーレン長崎 | ▲0-0 | ○5-0 | ○1-0 | 7 | 6 | 0 | +6 | |
3 | ホンダロック | ●1-2 | ●0-5 | ○2-0 | 3 | 3 | 7 | -4 | |
4 | レノファ山口FC | ●0-2 | ●0-1 | ●0-2 | 0 | 0 | 5 | -5 |
「ホンダロックvsFC町田ゼルビア」:ロック及ばず・・・町田が三位一体で優勝を果たす
ホンダロックvsFC町田ゼルビア:スタメン
ホンダロックvsFC町田ゼルビア:前半終了
ホンダロックvsFC町田ゼルビア:試合終了
勝ち点がほしいホンダロックは前半で2点のリードを許すと、焦りからプレーに余裕がなくなりラフなプレーが続く。こういうのを止めるのは主審の役割なのだが、その肝心の主審にも落ち着きが無く、曖昧な基準で笛を鳴らすとFC町田ゼルビアの怒りをかう。そんな光景が前半から見られたのは残念だが、その残念な光景はハーフタイムを挟んだお陰で見られなくなった。
冷静さを取り戻したホンダロックはここからが本番とばかりに本領を発揮する。引いた相手にも得点できるところがホンダロックの強みだ。後半開始まもなく、引いた相手にはこうするんだと言わんばかりのミドルシュートを突き刺して1点を返す。その後も何とか点を取ろうともがくのだが、結果的に徒労に終わってしまった
FC町田ゼルビアのリードで試合終盤に差し掛かったとき、大挙して押し寄せていた町田サポの町田コールに違和感を感じた。サポーターの塊と違うところから手拍子が聞こえる。手拍子の元はベンチ横で歓喜の瞬間を待っていた背番号11番、酒井良だった。酒井は先発で出場しながら後半半ばに足を軽く引きずりながらベンチに下がっている。「結構元気じゃないか」と本当につぶやいたかは分からないが、サポーターを煽る酒井を私が冷静に見ていたのはどうでもよい話だ。
ところで、決勝ラウンドの舞台となったスポーツパークあかんまはシートが無い。席と言えば隣接したクラブハウスの脇に木製のベンチが常設してあるのみで、その高級シートは来賓用となっている。観客席はグラウンドの脇にある緩やかな坂になった芝生一帯をロープで囲っただけのものだ。ロープを跨げばすぐそこはベンチである。
ラストプレーとなったホンダロックのコーナーキックが不発に終わると試合終了が告げられる。笛と同時に厚着の軍団がゴール前に押し寄せるのは珍しい光景ではない。いや、そこは淡々と表現するのではなく、もっと文章のクライマックスに持っていくべきシーンなのだろうが、実は違う。名シーンとして観客の私の目に焼きついたのはセンターサークルで挨拶を済ませた後の光景だ。選手たちはこれでもかと言うぐらいの胴上げを済ますと、自主的にロープの向こうのサポーターの元へ歩み寄り「全員」で写真撮影を行った。柵越しに選手とサポーターが一体となった写真を撮影するのはよく見る光景だが、選手やスタッフとサポーターが一つの塊となって撮られた写真はいくつあるだろか。それはロープ一本という貧弱な垣根が生んだ最高の宝物だ。その後もFC町田ゼルビアの選手とサポーターは抱き合ってJFL昇格と優勝を祝福した。石垣島でこの大会を行うことに賞賛の声は上がらなかったが、このサッカーパークあかんまは最終的に地域リーグの決勝に相応しい、アットホームな雰囲気を演出した。
FC町田ゼルビアは選手とサポーターが本当の意味で一体となった、とてもいいチームだ。どんな写真が撮れているかは、早速FC町田ゼルビアのホームページに上がっているのでご覧頂きたい。
「V・ファーレン長崎vsレノファ山口FC」:ミラクルレノファ、最後のミラクルに応えれず・・
V・ファーレン長崎vsレノファ山口FC:スタメン
V・ファーレン長崎vsレノファ山口FC:前半終了
V・ファーレン長崎vsレノファ山口FC:試合終了
V・ファーレン長崎の応援はとにかく賑やかだ。ドラムはもちろん、スネアやハイハット、サンバホイッスルなどをとにかく鳴らし、宴会ばりに陽気に歌う。町田に負けじと思ったのかは分からないが、試合前にロープ越しに選手全員と大きな輪を作ってただの消化試合で勝利を誓うと、サポーターのボルテージは一気に上がる。最終日の疲れを隠しきれないV・ファーレン長崎の選手をカヴァーするかのように盛り上げる長崎サポーター。そんな会場の雰囲気にのまれそうになっていたが、その陰に隠れてひっそりとオレンジの女神が二人レノファ山口FCの応援をしていたのに気づけたのは長崎サポーターのコールが途切れたからである。
あのジャージはどう見てもスタッフだ。初日、2日目と声だしサポーターが居なかったからか、崖っぷちだったからか、その理由を聞いておけばよかったと今さら後悔しているのだが、この女神二人が奇跡を起こす。結論から言おう。ゼロだったレノファ山口FCのサポーターはV・ファーレン長崎のその数を上回った。長崎サポーターの応援をコピーしながら両手に持った氷入りペットボトルでシャカシャカと音を立てて歌っていると、暇をもてあました地元の小学生を呼び込み、気づけば十数人のかわいい急造応援団が作られていた。さらにはいつの間にか現れた男性サポーターも加わり、さらにはプラカードを下げた地元テレビ局のスタッフまでもが加わり、最後まで声援を送り続けた。
悲しいのは試合がその美談にそぐわないことだ。レノファ山口FCは検討しながらも疲れきったV・ファーレン長崎に軽くあしらわれて終わった。どたばたしながら攻撃を組み立てながらもあと一歩で正確なプレーが出来ない。今思えば一次ラウンド3日目の松本山雅FC戦の前半でたった一つのチャンスをものにした時点で運は尽きていたのかもしれない。Cグループであれほど脅威だったレノファ山口FCの攻撃はどこにいってしまったのか。気づけば決勝ラウンドで勝点も得点もゼロという不名誉な記録が残ってしまっていた。
同じゼロでもV・ファーレン長崎は失点ゼロを達成した。しかも決勝ラウンドだけでなく大会を通じて無失点で終えたのだから驚きだ。カウンターの戦術をとりながら決して守備的なチームではない。縦に速く鋭い攻撃を持ち合わせたからこその無失点だろう。消化試合ながらも見事な勝利だった。
JFL4位にファジアーノ岡山、ホンダロックを含めた4者が明日の審査待ちへ
琉球の地でJFL昇格の戦いが繰り広げられるなか、本土ではJFLの日程が終了してファジアーノ岡山が4位の座を死守している。カターレ富山に引き分けながらもガイナーレ鳥取が敗れたため、何とか4位に留まった形だ。これでJ2参入の資格を得たのは「栃木SC」「カターレ富山」「ファジアーノ岡山」の3チームとなる。明日行われる委員会で3者のJ2入りが認められれば晴れて念願のJリーグ参入となる。
明日の委員会の結果が待ち遠しいのは栃木SC、カターレ富山、ファジアーノ岡山に限った話ではない。地域リーグ決勝大会で3位になったホンダロックもそのひとつだ。栃木・富山・岡山が3者揃ってJ2入りを果たせばJFLへ自動昇格となり、それ以外だと入れ替え戦にまわらなければいけない。3者のJ2入りは確実と言われているが、気は休まらないだろう。